ソフィ・マカリウ館長:常設展示で見逃すことのできないコレクションは、美術館のエントランスからすぐの場所に展示されているクメール美術です。カンボジア国外のいかなる場所でも、これほど優れたクメール美術のコレクションを見ることはできません。展示環境も作品の価値を高めていると思います。というのも、ここではほぼ自然光のもとで作品を鑑賞できるからです。天窓で覆われた中庭部分に展示され、記念碑的な存在感があり、ギメ東洋美術館を訪れる際は必見のセクションです。
ほかに当館で秀でているのは、各地域を往来しながら美術作品を鑑賞できるという点です。
1階のパキスタンやアフガニスタンのガンダーラのコレクションはたいへん優れた内容です。たとえばアフガニスタンのベグラムの遺跡からは、とても貴重なインドの象牙の装飾品やローマのガラス製品などが発掘され、文明のるつぼであったことを物語っています。これらのコレクションからは、アジアにおける当時の貿易のルート、資料の流通の軌跡を見ることができます。こうして鑑賞を続けてゆくと、ガンダーラから中央アジア、そして中国へとたどりつきます。つまり1階の展示だけでも、アフガニスタンから中央アジア、中国と、仏教の歴史をたどることができるのです。
ギメ東洋美術館のコレクションによって仏教の普及について知ることができるのは非常におもしろい点です。もちろんヒンズー教のコレクションも豊富にありますが、当館はアジアにおける仏教の普及を体現する並外れた美術館でしょう。そのコレクションは、東の果て、つまり日本までも含んでいます
ソフィ・マカリウ館長:ギメ東洋美術館では年に4回企画展が行われますが、そのうちのふたつはつねに日本に関係するものです。この春は18世紀の版画をもとに、歌舞伎役者をテーマにした展覧会が開催されています(会期:2015年4月15日〜2015年7月6日まで)。さらに今年はアジアにおける2000年にわたる演劇の歴史の全貌をテーマにした企画展も行っています(会期:2015年4月15日〜2015年8月31日まで)。これは今までに取り上げたことのないたいへん興味深いテーマです。インドから東南アジア、中国、そしてもちろん日本までも含む内容で、演劇の土台となった作品を考察しながら、イコノグラフィー(図像学)や演劇に必要不可欠な衣装などを紹介しています。
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Update : 2015.7.1 文・写真:増田葉子(Yoko Masuda)
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