Dossier special - 国内の特集

  • 1.石川潤学芸員に聞く─クレー展の楽しみ方
  • 2.展覧会レポート─クレーの「秘密」を探してみよう!

宇都宮美術館「パウル・クレー だれにも ないしょ。」展

展覧会レポート─クレーの「秘密」を探してみよう!

「クレーの作品には、よく見れば分かるような秘密の組み込み方をしたものがあります。」と語る石川氏。今回の展覧会では、クレーの秘密を見つけるための手がかりとなるよう、いくつかの作品に解説のパネルが出されているとのこと。そうしたヒントをたよりに展覧会を見ると、確かにクレーの秘密が見つかりました。ここでは、その例を紹介します。

発見!クレーの秘密1.フェルマータ

▲《アクセントのある風景》1934年

 クレーの「秘密」を“難易度別”に紹介する今回の展覧会。その第1章、つまりいちばん分かりやすい「秘密」を集めた章のテーマは「何のたとえ?」です。クレーが作品に多く用いた記号的モチーフのうち、「フェルマータ フェルマータ」と「矢印」に焦点が当てられています。フェルマータは音符や休符を長く延ばすことを意味する音楽記号。曲の最後に置かれることが多いことから、「終止符」としても機能し、クレーは「目」のようにも用いたそうです。

発見!クレーの秘密2.切り離された作品

 1枚の絵を切って、いくつかの作品にしたてるのは、クレーがときどき用いた手法です。今回の展覧会に出品された《窓辺の少女》と《墓地》も、もともとは大きな1枚の絵であったものを切り離したもの。会場には、この作品を再構成したパネルが展示されていて、この2点のほかに少なくとも4点が独立した作品として仕上げられたのだということが分かりました。これも、分かりやすい「秘密」のひとつです。

▲《窓辺の少女》1920年

▲《墓地》1920年

発見!クレーの秘密3.下層から見える別の絵

 一見、ひとりの女性のヌードを描いただけの作品と思える《裸体》。よく見ると、胸のあたりにもうひとり、横たわった小さな人物像が描かれています。じつはこれは、作品の下塗りの層に描かれたもの。クレーはその絵をその上から塗り込めながら、完全に塗りつぶすのではなく、よく見ればぼんやりと見える、というふうに仕上げたのだそうです。作品のそばには赤外線写真が展示されていて、下の絵がどのようなものであったかが分かります。

▲《裸体》1910年

▲《裸体》を左に90度回転させた状態の赤外線写真

発見!クレーの秘密 番外編 「特別クラス」のしるし

▲《赤のフーガ》(1921年)の端に書かれた「S. Cl(特別クラス)」の書き込み

 クレーは生前に自作の作品目録を制作していました。その中で、「特別クラス(Sonderklasse)」と分類された作品は、例外的に高値を付けたり、非売としたりしていた愛蔵品で、今回の展覧会には40点が出品されました。特別クラスの作品には、隅っこに「S. Cl」の書き込みがありました。

簡単な秘密から、解けない謎まで──。クレーがちゃめっ気たっぷりに仕込んだ「しかけ」や「たくらみ」を存分に楽しめる展覧会です。ぜひ、足をお運びください。

[参考]artscapeトピックス

[FIN]

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Update : 2015.8.1ページトップへ

「パウル・クレー だれにも ないしょ。」展

会期
2015年7月5日(日)〜9月6日(日)
会場
宇都宮美術館
URL
http://u-moa.jp/exhibition/exhibition.html
開館時間
9:30-17:00
※入館は16:30まで、8月11日(火)
〜16日(日)は19:00まで開館(入館は18:30まで)
休館日
月曜日(7月20日は開館)、
7月21日(火)
観覧料
一般:1,000円
大学生・高校生:600円
中学生・小学生:400円
※この情報は2015年8月更新時のものです。
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