Dossier special - 海外の特集

  • 1.パリの高級ホテルが創設した現代アートのための賞
  • 2.パレ・ド・トーキョー館長 ジャン・ド・ロワジ氏にインタビュー1
  • 3.パレ・ド・トーキョー館長 ジャン・ド・ロワジ氏にインタビュー2

ムーリス 現代美術賞

審査員(パレ・ド・トーキョー館長)ジャン・ド・ロワジ氏にインタビュー1

パリの16区にあるパレ・ド・トーキョーは、新鋭のアーティストの作品を中心に企画展を行う、現代アート専門の大型美術館です。今回ムーリス現代美術賞の審査員のひとりであるパレ・ド・トーキョー館長のジャン・ド・ロワジ(Jean de Loisy)氏に、ムーリス現代美術賞についてお話をうかがいました。

▲現代アート専門の美術館、パレ・ド・トーキョー外観

MMM:ムーリス現代美術賞の審査員は、錚々たる顔ぶれですが、まずロワジ氏がこの賞の審査員になった経緯を教えていただけますか?

ロワジ氏:私が賞の審査員になったのは2012年からで、パレ・ド・トーキョーの館長に就任したのがきっかけです。審査員にはパリのエコール・デ・ボザールの学長やルーヴル美術館の前館長をはじめ、とてもレベルが高い人物が名を連ねています。また収集家や服飾デザイナー、カステルバジャック(Jean-Charles de Castelbajac)氏など、多分野の人物が含まれているのも大変面白い点です。

MMM:審査の流れについて簡単にお話しいただけますか? 応募者の大半はフランス人でしょうか?

ロワジ氏:美術評論家のクレール・ムレーヌ(Claire Moulène)氏が毎年事前に応募者のセレクションを行います。この賞の特徴は、フランスで評判の高い美術評論家が応募者についてリサーチし、事前に10人のアーティストに絞る点です。事前選考は作品だけでなく、プロジェクトの質に応じて行われます。10人のアーティストの大半はフランス人ですが、全員ではありません。ただフランスを活動の拠点としているアーティストになります。

MMM:作品の審査の様子についてお聞かせください。賞の応募者に事前にご存じのアーティストは含まれていましたか?

ロワジ氏:はい。大半が以前より知っているアーティストでした。つまりフランスで有名になりつつあるアーティストということです。フランス国籍でないアーティストも含まれていますが、皆フランスですでに作品を発表したことがあり、フランスとゆかりがあります。美術関連の機関だけでなく、学校におけるグループ展などさまざまな場面においてです。審査員によって好まれるアーティストは多種多様で、また審査員の好みのプロジェク

▲昨年のムーリス現代美術賞のファイナリスト
©Saywho-Cedric Canezza

トもそれぞれ異なることから、毎回選考のための討論はとても長くなります。よって事前選考の質はとても高いといえるでしょう。私たち審査員の好みのアーティストと、彼らのプロジェクトの質の間に緊張感があり、そこにおいて私たちはどの企画が夢を見させるほど存分に風変わりで、制作するのに存分に理性を備えているかを見極めようと試みます。この風変わりさと理性の狭間の緊張感が、ムーリス現代美術賞の趣旨だと考えます。

MMM:ムーリス現代美術賞の受賞作品にはどのような傾向が見られますか?

ロワジ氏:まず作品のストーリー性が重要です。この賞は新鋭のアーティストに開かれた賞であるだけでなく、日常に見るものとは異なる作品、つまり私たちの知らない思想や規律のある領域へと私たちを導いてくれる作品のための賞です。いくつもの分野をカバーするアーティスト、たとえば映画、舞台、オペラなど、伝統芸術の異なるフィールドを切り拓くようなアーティストが受賞する傾向にあります。他と異なる考えを持っているだけでなく、さまざまな分野を作用させ合っている点が特徴です。過去の受賞者であるアレクサンドル・シング(Alexandre Singh/1980-)はオペラを創作していましたが、彼にとってオペラは文化的奉仕であると同時に人類の歴史を語る機会でもありました。このようにムーリス現代美術賞の受賞作品は何らかにコミットするプロジェクトであることが多いように思います。

次ページでは、引き続きムーリス現代美術賞の審査員
ジャン・ド・ロワジ氏のインタビューをご紹介します。>>

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Update : 2015.10.1 文・写真 : 増田葉子(Yoko Masuda)ページトップへ

ムーリス 現代美術賞

会場
ル・ムーリス
228 rue Rivoli 75001 Paris
Tel
+33 (0)1 44 58 10 10
2015年ファイナリスト作品の
 一般公開期間
2015年10月12日(月)〜
2015年10月25日(日)
※この情報は2015年10月更新時のものです。
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