Dossier special - 海外の特集

  • 1.時代の変化とともに発展したサン=ニコラの精密機械工業
  • 2.時計製造博物館の案内役 ブラールさんに聞く博物館の見どころ1
  • 3.時計製造博物館の案内役 ブラールさんに聞く博物館の見どころ2

時計製造博物館

時計製造博物館の案内役 ブラールさんに聞く博物館の見どころ1

時計製造博物館で案内役を務めているジュリー・ブラール(Julie Blard)さんに、常設展示の見どころを説明していただきました。

18世紀初頭〜19世紀末の常設展示

 シャルル=アントワーヌ・クルットは、サン=ニコラ・ムーブメントと呼ばれる時計のメカニズムを1725年にこの地で開発しました。錆びの心配がない2枚の真鍮製の板で機械を挟み込むつくりのムーブメントです。サン=ニコラのムーブメントは振り子の振れ幅が小さいことから、横幅の狭いエレガントな振り子時計を製造することが可能でした。ドゥモワゼル・デ・ゼレガント(エレガントな若い女性の意)と呼ばれる時計は、背が高くたいへん細身であるのが特徴です。花冠の装飾が付いており、サン=ニコラで製造されたもっとも典型的な時計のモデルといえるでしょう。

▲博物館の案内役のジュリー・ブラールさん
©Yoko Masuda

▲細身のフォルムが特徴的なサン=ニコラの伝統的な振り子時計の展示
©Musée de l'horlogerie

▲トウモロコシの彫刻が施された19世紀初頭製造のサン=ニコラの振り子時計
©Studio Yann Pelcat, dieppe

 またサン=ニコラの時計は、ノルマンディー地方特有の家具に合わせた装飾が数多くなされました。大半の時計の外枠はオークを素材に使用しています。すべてが手作りでとても高価であったサン=ニコラの時計は、婚姻の際のプレゼントとして家族から贈られることもありました。娘が誕生した際にオークの苗木を植え、娘の結婚を機にともに成長したオークの木を切って、時計の材料として使用したそうです。装飾も、つがいの鳥など、婚姻を象徴するモチーフがご覧になれます。

▲19世紀後半に製造された釣り人がモチーフの暖炉用の置時計
©Studio Yann Pelcat, dieppe

 大型の振り子時計とはまた別のタイプの時計がサン=ニコラで作られるようになったのは、フランス革命の後です。革命によって社会の構造が大きく変化すると、高価であったサン=ニコラの時計の注文が激減し、町は経済危機に陥ってしまいます。そこで地方の知事によって、パリからサン=ニコラに新たな技術者が送られました。それがオノレ・ポンス(Honoré Pons/1773-1851)でした。彼が取り組んだのは、パリのムーブメントを利用した時計作りです。錘(おもり)の代わりにばねを使用するもので、小型の時計の製造が可能になります。19世紀当時のオスマン様式のアパートでは、大型の振り子時計は時代遅れとなり、代わりに暖炉の上に置ける置時計が主流となりました。装飾も金で彩られた金属製のものが多くを占めています。当時のサン=ニコラの時計製造は、機械の部分が主で、装飾部分はパリで仕上げられることが多かったようです。

▲19世紀後半に製造された旅行に使用する携帯用の時計
©Studio Yann Pelcat, dieppe

 暖炉用の置時計よりも、さらに小さい時計が作られるようになるのは、19世紀に旅行文化が発達したことによります。小型のメカニズムはスイスのブレゲ社によって発明されました。ディナーの時間やカジノの時間、とりわけ鉄道に乗り遅れないためにも、持ち運びできる時計は旅行中に必須のアイテムだったのです。

次ページでは、引き続きブラールさんに
19世紀末〜20世紀後半の展示品を紹介してもらいます。>>

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Update : 2015.11.1 文・写真 : 増田葉子(Yoko Masuda)ページトップへ

時計製造博物館

所在地
48 rue Edouard Cannevel 76510 Saint-Nicolas-d'Aliermont
Tel
+33(0)2 35 04 53 98
E-Mail
accueilmuseehorlogerie@orange.fr
URL
http://www.musee-horlogerie-aliermont.fr/
開館時間
夏期(6月1日〜9月30日)/火曜日〜日曜日の10:00-12:00、14:00-18:00
冬期(10月1日〜12月31日、2月14日〜5月31日)/水曜日〜日曜日の14:30-18:00(12月24日と12月31日は-16:30)
休館日
1月1日〜2月13日、5月1日、11月1日、11月11日、12月25日
夏期/毎週月曜日
冬期/毎週月曜日、火曜日
入館料
一般:4ユーロ
14歳〜18歳:2ユーロ
14歳未満:無料
アクセス
パリのサン・ラザール(Paris St Lazare)駅よりディエップ(Dieppe)駅まで電車で約2時間、ディエップ駅からタクシーで約20分
※この情報は2015年11月更新時のものです。
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