では、新しくなった展示室を順に見て行きましょう。1階は年代順で、初期の頃からビロン館に来たときまでのロダンの変化を追っています。第1室「初期」にはヌードモデルを使った人体の油彩が、第2室「青年期」には、写実的な風景画が展示されており、成熟期の奔放なデッサンからは思いもよらないアカデミックな作風に、若い頃から基礎をきちんと学んだ人であるこ
とが見て取れます。第4室は、ロダンの周囲にいた人たちの肖像です。一つのガラスケースに入った、異なる髪形をした弟子のカミーユ・クローデル(Camille Claudel/1864-1943)の頭像3点は、モデルの愛らしさとともに、カミーユへのロダンの深い思いが伝わってくる、印象深い作品です。第5室は有名な「地獄の門」に関連した作品群。第7室には「カレーの市民」があります。
最後の第8室は、これまでになかったテーマを扱っています。ここは、ロダンがコレクターに作品を見せたり、モデルを使ってデッサンをしたりしていた部屋でした。モデルが着替えのときに使う19世紀末の屏風やロダンの彫刻、壺などを配置し、写真を元に、当時の様子を再現したのがこの展示室です。雑多なオブジェに囲まれているロダンの写真も展示されています。写真では大きな部屋に見えますが、部屋の真ん中に立ってみると、意外にそうでもないことが分かります。
2階はテーマ別の展示室です。ロダンは絵画を買ったり、友人の美術家と自作品を交換したりしていました。その中でも特に有名な画家の絵画を集めたのが第12室「モネ、ファン・ゴッホ」です。特にゴッホ(Vincent van Gogh/1853-1890)の作品は、《タンギー爺さん》をはじめとして数点あり、ここでゴッホに出会えるとは、望外の喜びです。第13室では、1900年のパリ万博のときに、その近くで開かれて大成功だったアルマ館でのロダン作品の展示を再現しました。第16室はカミーユ・クローデルの作品だけを集めた部屋です。
2階で新設された展示室は、第17室の「ロダンと古代美術」です。インスピレーションの源として、ロダンはギリシャ・ローマや古代エジプトの彫刻を集めていました。真ん中にロダンの《歩く人》があり、その周りを囲むかのように、壁に沿って多くの古代ローマの彫刻の破片が掲げられているという展示方法が斬新です。今回の改装で、作品の見せ方がより効果的になりました。同じモチーフの作品から素材によって出る効果の違いも興味深く、来るたびに新たな発見があるでしょう。
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Update : 2016.2.1 文・写真 : 羽生のり子(Noriko Hanyu)
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