▲ロバート・キャパ「パーティ」
イタリア、ローマ 1951年8月
International Center of Photography, New York.
©Robert Capa/International Center of Photography/Magnum Photos
キャパは若くてスマートで有名な写真家だったので、社交界でも人気の的でした。1951年に滞在したローマで撮影し、「ホリデイ」誌に掲載されたエレガントな男女のパーティー・シーンは、フェデリコ・フェリーニ(Fedelico Felini / 1920-1993)の映画『甘い生活』の一場面のようで、キャパの生活の一端を連想させます。
▲ロバート・キャパ「ロンシャン競馬場の観客」
フランス、パリ 1952年頃
International Center of Photography, New York.
©Robert Capa/International Center of Photography/Magnum Photos
1952年には、戦時中に住んでいたパリに戻り、「ホリデイ」のパリ特集のために、ロンシャン競馬場でレースに熱中する人々や、セーヌ河畔に立つディオールのモデルなどの写真を撮りました。ロンシャンの写真は、現代に撮影された作品と言われても分からないほど新鮮で、時代を感じさせません。
▲ロバート・キャパ「バルコニーにいる女優でモデルのキャプシーヌ」
イタリア、ローマ 1951年8月
International Center of Photography, New York.
©Robert Capa/International Center of Photography/Magnum Photos
ハリウッドの映画人とも交流があったキャパは、トゥールーズ=ロートレック(Henri de Toulouse-Lautrec/1864-1901)の生涯を題材にしたジョン・ヒューストン(John Huston / 1906-1987)の映画『赤い風車』(1952年)などの撮影現場の写真を撮る仕事もしましたが、次第に撮りたい題材ではなかったことに気づいていきます。1953年、キャパは「シリアスな仕事に戻りたい。ドーヴィルやビアリッツや雑多な映画の仕事はもう終わりだ」と友人への手紙に書いています。
1954年4月、カメラ雑誌「カメラ毎日」の仕事で日本に滞在中、「ライフ」から第一次インドシナ戦争取材の依頼を受けました。5月、北ベトナムで再び戦場のカメラマンとなり、アヒルを連れて歩くベトナム人農民と、それを眺めるフランス軍兵士というユーモア漂う秀作を生みますが、地雷を踏んで40歳の短い生涯を終えます。
キャパが撮影したカラー写真で公表されたものはそれほど多くありません。この展覧会で、さまざまなテーマのカラー写真があることを知ったのは大きな収穫でした。「戦場のカメラマン」という固定観念を離れて、キャパの仕事を多面的に見られる絶好の機会です。
展覧会場であるトゥール城は、市の中心部にある11世紀に建築が始まった古城です。ここでは2009年から、パリ市内コンコルド広場にある国立写真美術館ジュ・ド・ポーム(Jeu de Paume)によって、本館とは異なる展覧会を行っています。トゥールでは歴史的な写真を展示し、パリでは現代作家の展覧会を開くのが基本方針ですが、トゥール城は湿気などの理由で写真の保存が難しいため、歴史的なものでも、ヴィンテージやオリジナルプリントはパリで、デジタル写真はトゥール城で展示しています。本展では、オリジナルプリントをデジタルでスキャンした写真が展示されています。
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Update : 2016.5.6 文・写真 : 羽生のり子(Noriko Hanyu)
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