▲クロード・モネ
《瞑想 ソファーのモネ夫人》
1871年頃 油彩 48cm×75cm
オルセー美術館蔵
©RMN-Grand Palais (musée d'Orsay) / Hervé Lewandowski
コミッショナーのアミック氏は「本展は世界で初めて、肖像画だけを扱った印象派展です。普通、印象派の展覧会は、風景と肖像画を組み合わせています。ここでは、戸外での肖像画は避けて、室内の肖像画を選びました」と言います。
印象派の特徴の一つは、「肖像画のモデルが誰か、ほとんどすべて分かっている」ということです。クロード・モネ(Claude Monet/1840-1926)の最初の妻カミーユ(Camille Monet/1847-1879)が、モネだけでなくルノワールやエドゥアール・マネ(Edouard Manet/1832-1883)のモデルにもなったように、画家の家族が別の画家のモデルになることも珍しくありませんでした。家族や友人がモデルになった場合、分かるのは当然ですが、そうでないモデルの多くも、誰であるかが判明しています。それまではモデルは無名で、題名にもモデルの名前が出たことはありませんでした。
▲ピエール=オーギュスト・ルノワール
《白いショールのリーズ》
1872年頃 油彩
55.88×45.72cm
ダラス美術館 ウェンディ&エメリー・リーヴス・コレクション
© Dallas Museum of Art
この展覧会では、印象派の画家たちが描いた女性モデルの名前だけでなく、彼女たちがどのような人生を送り、どのように画家と関わったかが詳しく記されています。あたかも印象派の画家たちの私生活を覗き見るようで、ここまで知ってしまっていいのかと思うほどです。モネやルノワールをはじめとした印象派の画家たちは、若い頃はプロのモデルを雇うお金がなく、知り合いの女性をモデルに使いました。その一人、リーズ・トレオ(Lise Toréhot/1848-1922)は、1865年頃ルノワールと知り合い、1866年〜67年にかけて画家のモデル兼恋人となりました。《白いショールのリーズ》には、庶民的で、生命力にあふれた意思の強そうな女性が描かれています。リーズはひそかに1868年に男子を、1870年に女子を出産しました。その後の研究で、ルノワールの隠し子であることが分かっています。リーズは1872年に建築家と所帯を持ち、ルノワールの元を離れます。
▲エドゥアール・マネ
《スミレの花束を持つベルト・モリゾ》
1872年 油彩 55×38cm
オルセー美術館蔵
©RMN-Grand Palais (musée d'Orsay) / Hervé Lewandowski
モデルの中でもとくに有名なのは、画家のベルト・モリゾ(Berthe Morisot/1841-1895)です。マネが描いた、《スミレの花束を持つベルト・モリゾ》は、オルセー美術館の看板の一つです。モリゾは絵の中から観客をしっかりと見つめています。帽子、服、瞳の黒と背景のベージュ色の対比が、モデルの美しさと視線の強さを際立たせています。
次ページでは、本展のハイライトの一つ
ベルト・モリゾ関連の展示内容をご紹介します。>>
Update : 2016.8.1 文・写真 : 羽生のり子(Noriko Hanyu)
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