新しいウンターリンデンの特徴の一つは、19〜20世紀美術を展示する建物ができたことです。
チャペルを出て、中世初期、先史時代のオブジェや工芸品の展示室を過ぎ、順序に沿って進むと地下のギャラリーに入ります。美術館正面にある小運河が、その上を流れています。歩き進むと、突然、上から外光が入ってきます。ここは小運河のそばに建てられた小さな家の中で、その窓から入ってくる光でした。旧館と新館の境目で、これ以降は19世紀、20世紀美術です。地上からこの家をのぞき込むと、下に展示室が見えます。
19世紀美術は、地下のギャラリーの延長線上にあります。コルマールを中心にした、写実的なアルザスの風景画、アール・ヌーヴォーのガラス、ピエール=オーギュスト・ルノワール(Pierre-Auguste Renoir/1841-1919)などの印象派が紹介されています。20世紀前半に活躍した美術家がそのあとに登場します。ドイツ人画家、ハンス・ライヒェル(Hans Reichel/1892-1958)は、パウル・クレー(Paul Klee/1879-1940)の友人で、クレーによく似た作風ですが、クレーほどは激しくない、穏やかな絵を残しました。ウンターリンデンには、彼の美しい作品が数点展示されています。
今回の増築・改装工事の目玉は、アッカーホフ(Ackerhof)と呼ばれる新しい建物です。パブロ・ピカソ(Pablo Picasso/1881-1973)の有名な《ゲルニカ》のタペストリー版、ジャン・フォートリエ(Jean Fautrier/1898-1964)とともにアンフォルメルの先駆者とされるジャン・デュビュフェ (Jean Dubuffet/1901-1985)の作品などが並んでいます。ハンス・ハルトゥング(Hans Hartung/1904-1989)のような、第二次世界大戦後の抽象芸術の主要作家にも大きなスペースが割かれています。
常設展を見たあとにたどり着くのは、20世紀初頭の市営プールを改造した建物です。特別展やコンサート、講演会場として使われています。高い天井のガラス装飾が白を基調にした内装に映えて、落ち着いた雰囲気をかもしだしています。内容が濃いので、ていねいに見ていくと丸一日かかります。時間の余裕を持って、ゆっくりと過ごしたい美術館です。
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Update : 2016.10.1 文・写真 : 羽生のり子(Noriko Hanyu)
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