「芸術都市」ともいわれるメルボルンは、美術館・博物館も充実しています。とくに、国内最古の公立美術館として知られるナショナル・ギャラリー・オブ・ヴィクトリアは、1861年に設立された国内最古で最大級の美術館です。2003年にリニューアルし、ヨーロッパ、アジア、アメリカ、オセアニアの美術品を常設展示する「NGVインターナショナル」とオーストラリア国内の作家・作品を展示する「イアン・ポッター・センター(NGVオーストラリア)」の2か所に分けて展示を行っています。また、南半球最大級の博物館、メルボルン博物館も必ず訪れたいスポットです。
NGVインターナショナルでは、古代エジプト時代の遺物から20世紀の西洋絵画や彫刻、工芸品に至るまで豊富なコレクションを約7万点有しています。石造りのシンプルな外観ですが、館内に入ると、ガラス張りの入り口の壁面を滝のように水が流れていたり、カラフルなステンドグラスの天井から光が降り注いでいたりと、内外の対照的な構造も見どころです。4階建ての建物には、2階に主に東洋美術が、3階に古代美術や装飾芸術、16世紀から20世紀の西洋絵画、4階に現代美術が展示されています。2階の東洋美術は、美術館が設立された翌年に収集が開始され、その数なんと5,000点。紀元前2000年から現代に至るまでの絵画、書道、版画、彫像などを有し、日本からは鎌倉時代の地蔵菩薩の仏像や江戸時代の舎利塔といった仏教美術から現代の工芸品まで、日本文化を伝える作品が数多く展示されていました。さらに、ネーデルランド絵画の創始者、ヤン・ファン・エイク(Jan van Eyck/1395頃-1441)の《聖母子》や、ヴェネツィア派の巨匠、ティエポロ(Giambattista Tiepolo/1696-1770)の《クレオパトラの饗宴》、パブロ・ピカソ(Pablo Picasso/1881-1973)の《泣く女》など、各時代の秀逸な西洋絵画も充実しています。
NGVインターナショナルから徒歩5分ほどの場所にあるイアン・ポッター・センターは、国内の芸術品のみを収集・展示しており、その数は2万点にもおよびます。中でも、「アボリジナル・アート」のコレクションは見逃せません。そもそもは、オーストラリアの先住民がコミュニケーションのために使っていた絵画表現でしたが、1971年にイギリス人美術教師の指導がきっかけでキャンバスに描かれるようになり、現在はその独特の世界観が国際的に高く評価されています。
また、オーストラリアの伝説の盗賊、ネッド・ケリーを好んで題材としていたシドニー・ノーラン(Sidney Robert Nolan/1917-1992)や、オーストラリアの人々の暮らしを描いたトム・ロバーツ(Tom Roberts/1856-1931)といった19世紀後半から20世紀にかけて活躍したオーストラリアを代表する画家たちの作品も紹介されており、国内のアートの変遷について触れることができます。
また、ユネスコ世界遺産に登録されているカールトン庭園の敷地内に建つ、メルボルン博物館は、恐竜の化石や鉱物をはじめ、600以上の動物の標本、人間の心と体に関する展示、19世紀から現代までのメルボルンの人々の暮らしの再現など、自然科学と歴史文化を6つのテーマに分けて紹介しています。2013年にリニューアルされた「ブンジラカ」のギャラリーは、アボリジニの伝統文化を知るにはぜひ訪れたい場所です。このギャラリーは、アボリジニの神話に登場する創造神、ブンジル(楔形の尾を持つワシ)の巣をイメージした構造になっており、盾や槍、カヌーなど、先住民の貴重なコレクションの展示や彼らの暮らしを垣間見ることができます。
[FIN]
Update : 2017.3.1 文・写真 : 中村優歩(Maho Nakamura)
*情報はMMMwebサイト更新時のものです。予告なく変更となる場合がございます。詳細は観光局ホームページ等でご確認いただくか、MMMにご来館の上おたずねください。