▲ガレによる「北斎漫画」の鯉をモチーフにした花瓶。1878年　マイゼンタール・ガラス博物館蔵　
© Musée du verre Meisenthal

　工場の閉鎖後、その跡地に光が当てられたのは1978年のことでした。この年「ガラス友の会」のアソシエーションによって工場の事務所の建物を利用し、初めて企画展が行われました。この試みは以降毎年続けられることとなり、1983年には「ガラス博物館」が創設されるに至りました。博物館は年々コレクションを増やし、現在はブルグン・シュヴェレール社、ガレをはじめとしたマイゼンタールのガラス産業の歴史を物語る充実したコレクションを有しています。ジャポニスム作品、アール・ヌーヴォー作品といったガラス製品を主軸に、19世紀から20世紀にかけての美しく華やかな芸術の潮流を楽しめる内容です。

▲ガラス博物館1階の展示室　
© Musée du verre Meisenthal

　また、ガラス作品だけでなく、ガラス製造の際に使用する道具類、さらには製造過程のテクニックについても展示を通じて知ることができます。1階で上映されるショートフィルムでは、ガラス製造の何段階にもわたる細かい作業過程を公開しています。

▲CIAVのガラス工房内でのガラス吹きの様子。工房では体験講座も用意されている　
©Centre International d'Art Verrier

　1992年には、かつてカットなどの仕上げ作業を行っていた建物に、「国際ガラス工芸センター」が設立されました。マイゼンタールのガラス工芸の伝統を未来へとつなげていくのがこのセンターの目的です。建物内の工房では、現代のガラス作家とコラボレーションしながら、職人によるガラス製造が行われています。伝統的なガラス吹きのテクニックに、新しい質感、形、用途といった現代の感性が加えられ、斬新な作品の数々がここで生み出されています。こうしたガラス作品製造の様子は、工房の上階にあるギャラリーから見学することができます。

▲CIAV内のブティック。図書や現代のガラス作家の作品、マイゼンタールの名物でもあるクリスマス用装飾の購入ができる　
©Centre International d'Art Verrier

　またブティックではマイゼンタールの工房で作られた現代作家の作品の購入が可能。中でもオリジナリティー溢れるデザインのクリスマス用装飾は、マイゼンタールのガラス作品の名物となっています。

▲マイゼンタール・ガラス工芸センター外観。右の建物が工房とブティックのあるCIAV
©Centre International d'Art Verrier

　かつてガラス吹きが行われていた3,200m²もの広さを持つ工場跡は、2005年にセンターの大ホールとして生まれ変わりました。ここでは年間を通してさまざまな文化イベントが行われています。コンサートや演劇、現代アーティストの展覧会など、ジャンルを問わないアートの発表の場として、ロレーヌ地方の新たな文化発信のスポットのひとつに数えられています。