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P・ゴーギャン「美しきアンジェール」
© Photo RMN/H.Lewandowski/digitalfile by DNPAC |
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「ゴーギャンは社会や一般的な価値観と格闘し続けた画家です。いわゆる“殉教者としてのアーティスト”でもありました。」
こうした印象的な本江先生の言葉から今回のサロンは幕を開けました。ゴーギャンは力強い作風とともに、その波乱の生涯にもスポットが当てられることの多い画家です。豊かな家庭に育ったものの、幼い頃フランスからペルーに移り住み、また青年時代には見習い水夫としてリオデジャネイロへ。そして後半生はプリミティブな世界に憧れタヒチへと渡ったゴーギャン。この流浪の画家は、つねに社会からの疎外感を感じていたと、先生はお話されます。次々と映し出される作品のスライドからは、一見、傲慢で自信家のような画家の、奥底に潜む真実の姿が浮かび上がってくるようで、しだいにみなさんの目が釘付けになっていきました。
中景が省かれ、前景と後景がぶつかり合うような風景画からは、画家が感じていた「よそ者」といった懊悩が、いっぽう震えるような繊細な筆致からは、感受性豊かな一面を読み取ることができます。自画像の中のアンバランスに描かれた目には、そんな相反するゴーギャンの二面性が色濃く映し出されていたのです。
クロワゾニスム(区分主義)や綜合主義といった彼の画風を特徴づける美術用語も実際の作品を見ながらの解説によって、みなさん深く納得されたご様子。約120枚にもおよぶスライドを見ながら、先生に導かれるようにゴーギャンの人間性に深く触れた一夜となりました。 |