MMFの読書祭り フランス語による朗読会
フランスの「Lire en fête(読書祭り)」にちなみ、昨年に引き続き開催されたMMFの朗読会。今年はフランスの読書祭りの初日に当たる日に開かれました。17世紀からの歴史をもつ朗読会は、フランスでは子どもから大人までが楽しむイベントになっています。今年MMFが朗読会に選んだテーマは、日本でもよく知られたフランス王妃マリー=アントワネット。満員となった会場は、美しいフランス語の響きに満たされました。
今回はRMN(フランス国立美術館連合)から出版されている絵本「マリー=アントワネットのアルバム」を男女2名が朗読する第1部と、マリー=アントワネットがルイ16世の妹エリザベートに宛てた最後の手紙「La dernière lettre・・・王妃の最後の手紙」をフランス語(日本語対訳付き)で朗読する第2部の、2部構成でお楽しみいただきました。

「フランスの美術と歴史を巡りながらワインを楽しむ夕べ」
▲情感たっぷりに朗読するルイーズ・モンテーヌ。
 第1部では、幸せなウィーンでの子ども時代にはじまり、フランスへ嫁いだマリー=アントワネットのヴェルサイユ宮殿での暮らしぶりが語られます。ウィーン時代のモーツァルトとの心温まるエピソードや、王妃自身があだ名をつけた口うるさい「礼儀作法さん」とのやりとり、また窮屈な宮殿生活のなかで、束の間の喜びを見出す王妃の姿が、時折ユーモアを交えた語り口で朗読されました。スクリーンには日本語字幕とともに、王妃の肖像画やプライベートの時間を楽しんだプティ・トリアノンの写真などが映し出されます。音楽のような美しいフランス語の響きに耳を傾けながら、参加者の皆さんは物語のなかにぐんぐんと引き込まれていった様子でした。
 そして第2部は、マリー=アントワネットが義妹エリザベートに宛てた最後の手紙の朗読です。自らの死を目前にした王妃が書いたこの手紙は、エリザベートに届けられることはありませんでした。エリザベートもまた死刑を宣告され、兄や義姉と同じ運命をたどることになったからです。そんな悲しい運命を宿した手紙ですが、そこには私たちが知る贅沢三昧に明け暮れた王妃ではなく、娘や息子のことを案じる、母親の愛情に満ちたマリー=アントワネットの姿が克明に刻まれていました。フランス語と日本語で交互に語られる言葉のひとつひとつはとても切なく、静まりかえった会場に、そしてこの日集まられた参加者の皆さんの心のなかに深く染み込んでいったようです。
「フランスの美術と歴史を巡りながらワインを楽しむ夕べ」
豊かなイマジネーションの翼を広げ、絵本の世界を楽しんだ子ども時代――。まるでそんな子どもの頃に戻ったように、参加者の方々それぞれのなかには、新しいマリー=アントワネット像が生まれたようでした。フランス語の調べに耳を傾けながら、“語られる言葉”がもつ力の大きさを改めて感じたMMFの朗読会となりました。