サロン・デ・ミュゼ・ド・フランス「19世紀フランス美術の光と影」第5回「ゴーギャン―不動の絵画」
第一部 作品を通じて読み解いたゴーギャンの二面性
P・ゴーギャン「美しきアンジェール」
© Photo RMN/H.Lewandowski/digitalfile by DNPAC
 「ゴーギャンは社会や一般的な価値観と格闘し続けた画家です。いわゆる“殉教者としてのアーティスト”でもありました。」
 こうした印象的な本江先生の言葉から今回のサロンは幕を開けました。ゴーギャンは力強い作風とともに、その波乱の生涯にもスポットが当てられることの多い画家です。豊かな家庭に育ったものの、幼い頃フランスからペルーに移り住み、また青年時代には見習い水夫としてリオデジャネイロへ。そして後半生はプリミティブな世界に憧れタヒチへと渡ったゴーギャン。この流浪の画家は、つねに社会からの疎外感を感じていたと、先生はお話されます。次々と映し出される作品のスライドからは、一見、傲慢で自信家のような画家の、奥底に潜む真実の姿が浮かび上がってくるようで、しだいにみなさんの目が釘付けになっていきました。
 中景が省かれ、前景と後景がぶつかり合うような風景画からは、画家が感じていた「よそ者」といった懊悩が、いっぽう震えるような繊細な筆致からは、感受性豊かな一面を読み取ることができます。自画像の中のアンバランスに描かれた目には、そんな相反するゴーギャンの二面性が色濃く映し出されていたのです。
 クロワゾニスム(区分主義)や綜合主義といった彼の画風を特徴づける美術用語も実際の作品を見ながらの解説によって、みなさん深く納得されたご様子。約120枚にもおよぶスライドを見ながら、先生に導かれるようにゴーギャンの人間性に深く触れた一夜となりました。
第二部 ゴッホとともに暮らした地アルルの極上ロゼ・ワイン
 ゴーギャンはゴッホに請われ1888年、南仏のアルルへと旅立ちます。互いに強い個性を持ち合わせたこのふたりの画家の共同生活は、わずか数ヶ月で破綻。ゴーギャンとゴッホを語るときには、必ずといってよいほど登場する有名なエピソードです。今回はそのアルルを擁するエリア、南ローヌのロゼ・ワイン「ドメーヌ・ド・ラ・プティ・カサーニュ2002」をお楽しみいただきました。世界的なワイン評論家ロバート・パーカー氏に「最近数年間で飲んだ中で最上のロゼの一つである」と言わしめ、その辛口で強烈な風味が絶賛された極上ワインです。口どけのよい超薄型のチョコレート(銀座7丁目のショコラティエ「リシャール」ご提供)との相性も抜群。桜色に輝くロゼ・ワインを手に、熱っぽく語らう姿がサロンのあちこちに見られました。
昨年11月より各月一回のペースで開催してまいりました本サロンもいよいよ次回で最終回を迎えます。テーマは本江先生が著書を発表されているルドンです。
4月20日(木)開催の第6回オディロン・ルドンは定員に達しましたので、お申し込みの受付を終了させていただきました。
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