「今日は現在開催中の展覧会についてお話をしようと思っていのですが、改めて3回のオルセー美術館展を振り返ってみたいと思います」
最終回の今回は、過去3回の講座の総括ともいえる充実した内容となりました。
第1回展「モデルニテ:パリ・近代の誕生」が開催されたのはオルセー美術館の開館10年目にあたる1996年のこと。初めて日本にオルセー美術館のコレクションが上陸した記念すべき展覧会として大きな話題となりました。そしてこの展覧会成功の影には絶妙なタイミングが潜んでいた、先生はお話されます。
「当時は、東京都が“東京ルネサンス”という一大プロジェクトを立ち上げ、東京でさまざまな文化的なイベントを開催しようという機運が高まっていました。また、開館10周年を迎えたオルセーがフランス国内だけではなく、その評価を世界的に示したいと考え出した頃でもあります。ここに神戸の震災からの復興という、大きな要素が加わりました。こうしたタイミングが一致して、戦後の展覧会史のなかでも記録に残るものとなったのです。」
この第1回展は、東京都美術館のそれまでの企画展の入場者記録を塗り替えることになる52万人の来場者数をはじき出しました。こうした輝かしい記録とともに、3回におよぶ日本でのオルセー美術館の歴史は幕を開けることになったのです。 |