3月25日から国立新美術館で開催中の「ルーヴル美術館展 美の宮殿の子どもたち」。今回のサロン講座では、本展の日本側監修者である大野芳材先生をお招きし、展覧会の見どころはもちろん、開催にいたるまでの背景をたっぷりお話しいただきました。



大野芳材先生
 「今回の展覧会では、ルーヴル美術館の8部門の内、7部門からコレクションを出してもらいました。広い展示空間をうまく使って、ひじょうによい構成に仕上がったと思っています」
 日本側監修者として今回の展覧会をまとめられた大野芳材先生は、まずは展覧会開催にいたるまでのエピソードからお話を始められました。この展覧会の構想がもちあがったのは、6年前の2003年3月のことだそうです。この時点では、ルーヴル美術館8番目の部門となるイスラム部門がまだなかったため、7部門からのコレクション出品となったとのこと。当初は絵画だけの展覧会を考えていたそうですが、出展作品の選定を進めていくうちに、他部門からのコレクションも含めることで、より深みのある展覧会になるのでは、との結論にいたりました。


レクチャーの模様

 「時代や地域、さらには文化的背景も異なる作品を、<子ども>というひとつのテーマにまとめ上げることは、骨の折れる作業でした。もちろん、出展作品は大きさもバラバラです。ですが7つの章を組み立てることで、さまざまな視点から<子ども>というテーマに迫ることができました」
異なる背景があったからこそ、“普遍的な子どもの姿”という深いテーマを導き出すことに成功した今回の展覧会。普段なかなか聞くことのない展覧会実現までのエピソードが伺えるのも、サロン講座の魅力のひとつです。


講義終了後は先生との交流会。紅茶とマカロンをご一緒に。

 さらに大野先生は、本展にもうけられた7つの章に沿って、代表的な出展作品を紹介してくださいました。必見作品のひとつ《少女のミイラと棺》は、ルーヴル美術館が所蔵する唯一の子どものミイラです。「この作品の展示室は照明を絞り、幻想的で美しい空間になっています。本展では、照明はもちろん、展示室の壁や台の色を微妙に変えて、各作品のもつ世界観をより理解できるような工夫をしています。こうした会場構成にも注目していただきたいですね」と大野先生。傑作ぞろいのデッサンをはじめ、見逃せない作品を次々に分かりやすく解説いただきました。
 「今回の展覧会は、無垢な子どもの存在、そして家族の在り方を改めて見つめ直したいという想いから始まりました。さまざまな家族間の問題が取りざたされる現代、ひとりでも多くの方々に観ていただきたい展覧会です」。こう締めくくられた大野先生の言葉からは、ひとつの展覧会に込められた大きな社会的な意義を感じることができました。