「文字を創り出すサイラス・ハイスミス×文字を再構築する大日本タイポ組合⇒言語を超えて文字で遊ぶ」

1984年に初開催した「モリサワ賞タイプフェイスコンテスト」を前身とし、独創性や審美性を追究した新しい書体を提案する「タイプデザインコンペティション」。今回MMMでは、同コンペの2014年度欧米部門の審査員であるサイラス・ハイスミス氏と、文字をテーマに独自のデザインで活躍する大日本タイポ組合をお招きし、それぞれの日頃の活動を伺いながら、オリジナルの文字創りに挑戦する、レクチャー&ワークショップを開催しました。

 「今日は、大日本タイポ組合と一緒ということで、(丸坊頭の)おふたりを真似て自分の髪もカットしてくる予定でしたが、時間がなくてできませんでした(笑)」。 

 こんな“サイラス流”ジョークで今回のMMMレクチャー&ワークショップは幕を開けました。
 「新しいタイプフェイス(書体)をデザインするときには、まずは文字の正しい形を知ることが重要です。具体的な対象、用途を設計する。それに合わせて良いタイプフェイスを創り出すには、明確な役割が必要になる」。


ワークショップの中で思い思いの「e」を創る様子

 タイプデザイナーとして第一線で活躍されているサイラス氏は、ご自身の作品を例に取りながら、文字を生み出す秘訣を教えてくださいました。
 一方、「文字の形にふたつの意味を持たせる場合、そのふたつをうまく成立させようとすると、どこかでバランスを取る必要がある」と語るのは、秀親氏と塚田哲也氏で結成された大日本タイポ組合のおふたり。日本語やアルファベットの文字を解体し、再構築することによって、新しい文字を創り出しているおふたりならではの手法を明かしてくれました。その上で、アルファベットからカタカナを再構築する「KUROFUNEフォント」や文字のピースを動かすと漢字にも絵にもなるという積み木の商品「トイポグラフィ」を紹介。文字の面白さを伝える作品の数々は、新しい気づきをもたらしてくれました。
 レクチャーの後は、いよいよワークショップです。まずは、サイラス氏による指導のもと、白と黒の紙を使って小文字の「e」の制作に挑戦しました。参加者の方々は、言葉少なに、ハサミやカッターを使ったり、手でちぎったりしながら、思い思いの「e」を創り上げました。続いて、大日本タイポ組合が提案したのは、「e」で使った残りの紙を使って「え」を創るという斬新なもの。「最初から創っても独創的な形はできません。“残りカス”を使うからこそ、いいものが出来上がる。ゴミゼロ運動です(笑)」と、大日本タイポ組合流の発想は目からうろこでした。


講師のサイラス・ハイスミス氏(左)、大日本タイポ組合(右)

 「偶然にできた形の上に偶然が重なる。それが面白い。皆さんが自由に作業してくれて、最後は“予定通り”にいったと思います」(大日本タイポ組合)
 「アルファベットを使う国民はLUCKY! 文字は人が創った素晴らしいものなので、これからもこういう作業を続けていってください」(サイラス氏)
 サイラス氏と大日本タイポ組合の軽快なトークに引き込まれ、笑いの多いあっという間の1時間半となったレクチャー&ワークショップ。何気なく使っている文字の魅力を再発見した一夜となりました。

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