今年の秋はウィーンが熱い!@ウィーン国立歌劇場日本公演記念レクチャー

10月15日から上野の国立西洋美術館で「クラーナハ展―500年後の誘惑」展、そして10月25日からは、オペラファン垂涎のウィーン国立歌劇場の来日公演が始まります。MMMでは「今年の秋はウィーンが熱い」と題して、シリーズ講座を開催。まずは“オペラの殿堂”ウィーン国立歌劇場をテーマとした講座から幕が開きました。

 今回はレクチャーのテーマが「オペラ」ということもあり、絵画作品がテーマのレクチャーの時とは少し違った雰囲気に包まれました。講師として登壇されたのは、音楽評論家の堀内修さんです。

「今日、こちらにうかがうとき、銀座の街を歩いていて、この街にオペラハウスがあったら、ぴったりなのにと思いました」
開口いちばん、柔らかな美声と親しみやすい口調でこうお話しされた堀内さん。オペラというと、少し敷居が高いと思われながら参加されていた皆さんは、早くも堀内さんの話術にすっかり惹きつけられたようです。
 堀内さんは、初心者にもわかりやすく、なぜウィーンがオペラの都になったのかをまずお話しくださいました。そもそもオペラは、ルネサンスの完成として、1600年頃にフィレンツェで誕生したそうです。ルネサンスは、ご存じの通り、ギリシア・ローマの古典世界を復興させようとする動きでした。
「フィレンツェで生れたオペラはすぐにヨーロッパ中に広がりましたが、もっとも積極的に受け入れたのが、ウィーンの宮廷でした。当時、ウィーンは、古代ローマ帝国を受け継ぐといわれた神聖ローマ帝国の首都。そして、そこを治めるのが芸術を深く愛好したハプスブルク家でした。とくにレオポルド1世は、愛好するだけでなく、自らオペラの作曲までしたほどだったんです」

 そして、そのウィーンの象徴として、現在もウィーン国立歌劇場は街の中心に堂々と建っています。現在の歌劇場が建設されたのは、1869年のこと。第二次世界大戦で、舞台や客席は破壊されてしまいましたが、ロビーやホワイエは現在もほぼ建設当時のままの姿で残されています。堀内さんは、イタリア式といわれる馬蹄形をした優美な客席の様子から、ロビー、ホワイエにいたるまでを動画で見せてくださいます。その豪奢な様子には、思わず参加者からため息がもれるほど。
「嘘か本当かはわかりませんが、第二次世界大戦で爆撃を受けた翌日から、再建の準備が始められたといわれています。ウィーンにとって、いかにこの歌劇場が大切かということがよくわかるエピソードですね」と堀内さん。
その後は、10月25日から始まるウィーン国立歌劇場の日本公演で上演される演目「ナクソス島のアリアドネ」(R.シュトラウス作曲)、「フィガロの結婚」(W.A.モーツァルト作曲)、「ワルキューレ」(R.ワーグナー)の見どころや聴きどころを、実際のウィーン国立歌劇場の舞台の一場面を映像で視聴しながら解説いただくという、なんとも贅沢な時間が流れました。甘やかな旋律のアリアや超絶技巧を駆使したアリアなど、参加者の皆さんは、ただただうっとりと聞き入っていらっしゃいました。

 今回は「今年の秋はウィーンが熱い」と銘打ったシリーズ講座の第一弾として、“オペラの殿堂”ウィーン国立歌劇場をテーマにした講座をお楽しみいただきました。第二弾は、10月15日から上野の国立西洋美術館で開催される「クラーナハ展―500年後の誘惑」展をテーマにした講座が11月18日に開催されます。まさに芸術の秋を堪能できるこのシリーズ講座。ぜひご期待ください。

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