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イベントレポート
EVENT REPORT

これまで開催したプログラムを
レポート形式でご紹介します。

MMMレクチャー
2018.6.28

MMMライブラリ・プチ読書会
第2回テーマ「ニッシム・ド・カモンド美術館」

日   時:
2018年6月28日(木)15:00~16:00
会   場:
東京都中央区銀座7-7-4 DNP銀座アネックス B1
講   師:
MMMライブラリスタッフ

6月28日、銀座MMMのB1階のMMMライブラリで第2回「プチ読書会」が開催されました。テーマは、フランス人のマダム・ド・モンタランベール伯爵夫人著『パリのミュゼたち』より、ニッシム・ド・カモンド美術館。19世紀末の大ブルジョワの個人邸宅を公開した美術館の魅力について迫りました。

 MMMライブラリは、フランスほか、世界各国の美術館・博物館情報を得ることができる場所。ここに常駐する専門スタッフが案内人となって行われた2回目の読書会のテーマは、パリ8区の「ニッシム・ド・カモンド美術館」です。今回も前回に引き続き、隔月でMMMWebサイトに掲載されており、2012年9月には書籍化もされたパリ在住の美術愛好家アンヌ・ド・モンタランベール夫人著『伯爵夫人おすすめの個性派美術館 パリのミュゼたち』の中からの紹介となりました。
 この美術館はもともと、19世紀末のトルコ系のユダヤ人銀行家であったモイズ・ド・カモンド伯爵とその家族が暮らした個人邸宅。6月現在、世界最大手の旅行口コミサイト「トリップアドバイザー」のパリの美術館・博物館ランキングでは、第5位にランクインしており、実は満足度の高いことで知られる美術館です。決して大きくない邸宅美術館がなぜそこまで人気があるのか――、参加者の方は、MMMWebサイトに掲載された同美術館の記事を読みあげながら、スタッフの案内でその謎に迫っていきました。
 第一次世界大戦で戦死したモイズの愛息、ニッシムへの追悼の想いを託して、1936年に開館したニッシム・ド・カモンド美術館。ニッシムの母親であり、モイズの元妻、イレーヌは、実はもっとも美しい少女像と言われるルノワールの《イレーヌ・カーン・ダンヴェール嬢(可愛いイレーヌ)》(1880年)のモデルともなった女性というから驚きです。

 「この作品はそもそもモイズとイレーヌの娘、ベアトリスが所蔵していました。しかし、ユダヤ人だったことからナチス・ドイツに作品が没収されてしまい、戦後になって、イレーヌの元へと戻されることになります。幼き自分の姿が離れた娘を彷彿とさせるからとか、生活に困窮したからとか様々な説がありますが、この作品を彼女は売却。スイスのビュールレ・コレクションに収められることになりました」とスタッフが解説。こうしたカモンド家のドラマチックなエピソードがスタッフから次々に披露されると、参加者の方も数奇な運命をたどった一家にぐいぐい引き込まれていきました。
 さらに、この一家を語る際に忘れてはならない存在が、モイズのいとこ、イサック・ド・カモンド伯爵です。モイズは18世紀の美術コレクションに情熱を傾けましたが、イサックは当時評価されていなかった印象派の作品に目を向けて収集。マネ《笛を吹く少年》(1886年)をはじめ、ドガやセザンヌら、オルセー美術館の重要な印象派コレクションの大部分を形成した人物でした。小さなプライベートミュージアムをきっかけとして広がっていくフランス美術界のつながりに、参加者の方も感嘆の声を漏らしていました。 

 この美術館を以前訪れたことがあり、プライベートミュージアムがお好きな参加者の方からは、「調度品を見せる美術館は多いけれど、キッチンなどを見せる邸宅美術館は珍しく印象に残っています。今回美術館について改めて学び、今度はこの書籍を片手に再び訪れたい」といった声も聞かれました。
 記事の情報だけでなく、あらゆる角度からフランスのアート情報が得られる「プチ読書会」。気軽にスタッフに質問したり、感想を述べあったりできるざっくばらんな読書会は、充実した午後のひと時となりました。

※第4回は8月27日(月)に開催予定です。詳細はこちら

Update : 2018.8.1

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