「アトリエの写真」にフォーカスした初の展覧会
『アトリエにて―撮影されたアーティスト アングルからジェフ・クーンズまで』
Dans l'atelier
L'artiste photographié,
d'Ingres à Jeff Koons
美術史のみならず、写真史を語る上でも貴重な一冊
「アトリエ」は、創作の現場であるとともに、インスピレーションの源ともなってきました。「アトリエ」というキーワードから、17世紀のレンブラントやフェルメールから、19世紀のアングル、20世紀のマティスやピカソなど、多くの画家たちが描いた絵画作品を思い浮かべる方も多いのではないでしょうか。けれども、今月、MMMライブラリから皆さまにご紹介するのは、絵画ではなく写真。芸術家たちの創作の現場を写した「写真」にフォーカスを当てた初めての大規模な展覧会「アトリエにて―撮影されたアーティスト アングルからジェフ・クーンズまで」の公式図録です。
本を開くと最初に現れるのは、「ファッション界のダ・ヴィンチ」とも呼ばれるイタリアのファッションデザイナー、マリアノ・フォルチュニのアトリエを写したパノラマ写真。骨董から絵画など古今東西の美術品が所狭しと並ぶアトリエの様子からは、フォルチュニのアトリエが彼のインスピレーションの源であったことがよく分かり、この展覧会全体のコンセプトを象徴しているようです。
最初の章で紹介されるのは、「巨匠」と呼ばれる芸術家たちのアトリエ写真です。古いものでは、19世紀新古典主義の画家アングルを撮影した1857年の写真。また、印象派の画家コローの戸外制作の様子を捉えた1871年の写真もあり、その他、ロダンやクールベ、藤田嗣治、ピカソなど、西洋美術の歴史を作り上げてきた巨匠たちのアトリエが続きます。次の「アトリエでの人生」では、ポロックやカルダー、ダリなどのアトリエと、そこで繰り広げられた生活の一部を垣間見せるような写真が収められていますが、それぞれに興味深く、頁を繰って飽きることがありません。
この本全体で紹介されるアトリエの写真の数はなんと約400点。誰のアトリエか、ということばかりについつい気がいってしまいますが、それらを撮影した写真家の名を見れば、そちらもまた錚々たる面々。ブラッサイ、ボリス・リプニツキ、ドゥニーズ・コロン、ジェラール・ロンドー、ブレッソンなど19世紀から20世紀の写真史に残る写真家たちの名前が並びます。美術史と写真史、どちらにおいても貴重な一冊、ぜひ、お手にとってご覧ください。
※こちらでご紹介する書籍は地下1階のMMMライブラリにて閲覧いただけます。
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Update : 2020.8.7
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