サロン・デ・ミュゼ・ド・フランス「19世紀フランス美術の光と影」第4回「セザンヌ―静動する画面」
第一部 自らの情念を画面に封じ込めた画家セザンヌの力
P・セザンヌ「サント・ヴィクトワール山」
© Photo RMN-H.Lewandowski/digital file by DNPAC
 「特にドラマのない人生です」セザンヌのプロフィールを紹介するにあたって、本江先生はふとそんな言葉をもらされました。裕福な家庭に育ち、人生の大半を故郷のプロヴァンスで過ごし、死の直前まで黙々と絵を描いたセザンヌ。しかし、年譜が表す人生の平坦さからは想像もつかないほどの力が、その画面にはみなぎっています。その源泉は、セザンヌの内に秘められた情念だと先生は話されます。彼は自らが抱く幻影や欲望を、強引なまでの力で画面に封じ込めていったのです。
 作品を見ながら先生のお話を伺っていると、その時代ごとの作品の魅力と画風の変遷がよく分かります。物質そのものの魅力を伝える初期の静物画、画家の情念を強く感じさせる小品、自らの理想の象徴だったサント・ヴィクトワール山の連作。水平・垂直のとれた安定した画面から「不安定の安定」とでもいえるような独自の構図へ──。セザンヌは、古典的な美意識を抜け出して、地面から沸き立つような自然のダイナミズムを捉えつつ抽象へと向かい、19世紀絵画から20世紀絵画への橋渡しをしたのです。静謐さのなかに力強い存在感を内包するセザンヌの作品。その源が先生のお話によってひとつずつ解き明かされ、セザンヌの魅力をよりいっそう理解できたサロンとなりました。次回は、そんなセザンヌを敬愛して止まなかった画家ゴーギャンの登場です。
第二部 セザンヌが愛した南仏が育んだ美酒
 グラスを片手に気軽なコミュニケーションを楽しんでいただく第二部です。今回のワインは、セザンヌが愛した南仏生まれの高級ぶどう品種シャルドネから作られたスパークリング・ワイン「キュヴェ・クレモント・ブラン・ド・ブラン」。すっきりとした辛口のワインにあわせて、シナモンやナツメグ、カレーなどのフレーバーのショコラ(銀座7丁目のショコラティエ「リシャール」ご提供)もお楽しみいただきました。本江先生にご質問をなさる方、ご参加くださった方同士でお話をなさる方、まさに、「サロン」の名にふさわしい一夜となりました。
サロン・デ・ミュゼ・ド・フランスは、4月まで各月1回のペースで開催いたします。
次回は後期印象派を代表するゴーギャンがテーマ。本江先生のサロン講座も残すところ2回となりました。ぜひ次回のサロンもご期待ください。
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