サロン・デ・ミュゼ・ド・フランス「ルーヴル美術館の魅力―フランス絵画の黄金時代」第1回 ダヴィッド(1748-1825)
美術史の大きな流れのなかでひとりの画家を捉える革命の動乱期を経て新古典主義を牽引した画家ジャック=ルイ・ダヴィッド
ジャック=ルイ・ダヴィッド「ホラティウス兄弟の誓い」
© Photo RMN/G_rard Blot/Christian Jean/digital file by DNPAC
 「ダヴィッドは非常に硬派な画家であるせいか、日本人にはなじみが薄いかもしれません。でも、本当はじつに優れた画家です。今日はそこを一緒に見ていきましょう」。こうおっしゃる千足先生は、まず、18世紀に「新古典主義」という芸術様式が生まれるに至るまでの背景からお話を始めました。
 キリスト教的観念主導の中世の美術から、古代・ギリシアローマの美術を規範に調和のとれた美を追求したルネサンスへ。そして、ダイナミックで男性的なバロック芸術から、華やかで女性的なロココ芸術、さらに再び古典に回帰した“換骨奪胎の芸術”新古典主義。まるで政治の世界のように、保守と革新という関係性のなかで隆盛と衰退の歴史を見せる芸術の図式を、先生は分かりやすく解説していきます。しかし、「美術様式は年号のようにきれいに分けられるものではない」ということに留意すべきと先生は話します。例えば、フランス革命を機にロココから新古典主義へ変わったと思っている人もいるかもしれませんが、新古典主義は革命前、マリー=アントワネットの時代にはすでに生まれおり、革命を経てナポレオンの庇護のもと、大きく花開いていくのです。
 そして、壮年期に革命を経験し、その後、ナポレオンの信任を得て新古典主義を牽引していったのがダヴィッドです。ローマ賞を受賞した彼の芸術とともに、時代は新古典主義一色に染まっていきます。先生の解説とともに、スライドに映し出される大作の数々を見ていると、ダヴィッドの完璧なデッサン力と卓越した構成力に驚かされ、彼がいかに素晴らしい画家であったかがよく分かります。
 美術史の大きな流れのなかでひとりの画家を捉える──。おぼろげな知識の断片がひとつになることの喜びを得られたようなお話となりました。
 講座の後は、“教室”を出て自由なコミュニケーションが楽しめる、少人数サロンならではの特別なひととき。冷たいお飲み物を片手に、千足先生に質問をなさる方々、美術談義に花を咲かせる方々、各々楽しく過ごされている様子でした。土曜日の銀座、落ち着いた雰囲気のなかで楽しむサロン講座。次回のテーマは優雅で女性的な肖像画も魅力の画家アングルです。
サロン・デ・ミュゼ・ド・フランスは、7月と9月に開催いたします。
次回はアングルがテーマ。ぜひ次回のサロンもご期待ください。
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