いよいよ今月から東京でも幕を開ける「オルセー美術館展―19世紀 芸術家たちの楽園」展。日本におけるオルセー美術館展シリーズの集大成ともいえる本展には、大きな注目が集まっています。今回のサロン講座は、過去のオルセー展にも深く関わってこられ、今回の展覧会では、日本側のコミッショナーを務められている美術史家の高橋明也先生をお招きしています。
第2回のテーマは「オルセーのコレクションの魅力」。フランスから帰国されたばかりという高橋先生からは旬のお話も飛び出しました。
オルセー開館20周年記念の写真展「VU' à Orsay」の内容もご紹介いただきました。
 「第1回目のサロン講座のあとすぐ渡仏し、先日帰国したばかりです。ですから皆さんとはつい数日前にお会いしたばかりのようで……」と、リラックスした雰囲気で始まった第2回目のサロン講座。本題に入る前には、フランス滞在中のホットな話題もお話いただきました。「12月1日にオルセー開館20周年記念式典に出席してきました。派手な式典ではありませんでしたが、開館当時の懐かしい仲間に再会できて、とても心和むひと時でした」。こうしたお話を伺っていると、不思議とフランス、そしてオルセー美術館が身近に感じられてくるから不思議です。
  さて、第2回目のサロンテーマは「オルセーのコレクションの魅力」です。ちょうど帰りの飛行機のなかで、今後のオルセー美術館の展望を語る館長ルモワンヌ氏の記事を目にしたという高橋先生。その雑誌の記事のなかで館長は「オルセーがカバーする作品の年代を再度見直さなければいけない」と語っていたそうです。
 「じつはこれは発足当時から問題になっていたことだったのです。オルセー美術館を建てることを決定したのはジスカール・デスタン大統領でした。彼は、この新しい美術館はフランスの偉大な19世紀を体現する美術館でなくてはいけないと考えていました。ですから、ドラクロワのあの有名な『民衆を率いる自由の女神』から始めることを主張したのです。しかし結局この“フランスの栄光”といった発想は退けられ、コレクションは、1848年、つまり二月革命を出発点に第一次世界大戦あたりまでをカバーするということに落ち着きました」
 まずは現在のオルセーの性格づけからお話くださった高橋先生。こうした美術館創設にいたる舞台裏のお話は、あまり日本では表立って耳にできない情報だけに、ひじょうに興味深い内容です。
  そしてスライドを使用しての具体的なコレクションの解説では、アングルやシャセリオー、バジールといった画家の作品から、カルポーやフランソワ・リュードの手による彫刻作品まで、その魅力に加え、なぜその作品がオルセーにあるのかといったことも交えてお話いただきました。
 「現在のオルセーのコレクションはおもに19世紀後半のものが中心になっています。第二共和制から第三共和制までの時代のものを扱おうという姿勢が強くみられますね」と高橋先生。今回のサロン講座では、オルセーのコレクションの魅力を知るだけでなく、フランスの近代史をわかりやすくおさらいできた講座内容となりました。美術館、そしてそこに収蔵されている作品は、時代背景を写す鏡であること、またそれが美術鑑賞の大きな魅力のひとつであるということを、高橋先生のお話を通して教えていただいたひと時となりました。
 次回は日本で開催された過去2回のオルセー展と今回の「19世紀芸術家たちの楽園」展をめぐるお話です。3回の展覧会すべてに深く関わってこられた高橋先生から、どんなお話が飛び出すのか、とても楽しみです。
エドゥアール・マネ『すみれのブーケをつけたベルト・モリゾ』1872年
©musée d'Orsay - photo P.Schmidt
サロン・デ・ミュゼ・ド・フランス「オルセー美術館展のすべてを楽しむ」は、全4回のサロン講座と1回の展覧会レクチャーを予定しています。次回のテーマは「3つのオルセー美術館展をめぐって」。ぜひ次回のサロン講座にもご期待ください。
同館誕生20周年を記念し、オルセー美術館との連携により公開しているMMFサイト内特集ページもぜひご覧ください。
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