オルセー美術館の歩み
今やすっかりルーヴル美術館と並ぶ
パリの美術スポットとして定着したオルセー美術館。
古き良き19世紀のパリの面影を色濃く残す
この美の館が誕生したのは、
今からわずか20年前、1986年12月のことでした。
2006年12月9日に、開館20周年を迎えることとなった
オルセー美術館の歩みをご紹介いたします。
©Musée d'Orsay
 
 
19世紀美術の再評価と美術館建設の必要性
▲かつてプラットホームの面影を残す美術館内部。
©Musée d'Orsay / photo P.Schmidt - S. Boegly
 1986年12月9日、パリのセーヌ左岸。大統領ミッテラン(François Mitterrand)は、新たな美術館の開館を華々しく宣言しました。ベル・エポックの香り漂う壮麗な建物で知られるオルセー美術館。1947年から1948年までルーヴル美術館付属の印象派美術館としてジュード・ポームに展示されていた印象派の作品をはじめ、アール・ヌーヴォーなどの装飾芸術、そして舞台芸術や写真まで、19世紀から20世紀初頭を象徴する各分野の芸術作品が並び、来館者を古き良きパリの時代へと誘う美術館誕生の瞬間でした。
 そもそもオルセー美術館創設の運動が起こったのは、開館13年前の1973年のこと。時の大統領ポンピドー(Georges Pompidou)は、ジュード・ポームやルーヴル美術館に散逸していた印象派絵画を一堂に集め、市民に広く公開することを思い立ちます。
折しも当時、19世紀の建築や彫刻、写真などの果たした役割の重要性が再認識され始め、総合的な19世紀美術館の必要性が各所で叫ばれていました。パリに新たな美術館が誕生する土台が着々と築かれつつあったのです。
▲現在、オルセー美術館のシンボルとなっている時計台は、駅舎の名残を強く感じさせるもののひとつ。時計台の裏側はカフェとして生まれ変わった。
© Musée d'Orsay
 
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パリ市民や政治家が声を上げ 守り抜いた19世紀の歴史的建造物
▲駅舎としてオープンした当時のオルセー駅。
©Musée d'Orsay
 ポンピドーが構想した新たな美術館の建設は、次の大統領ジスカール・デスタン(Valéry Giscard d'Estaing)の時代に本格的に動き出しました。そして美術館の建物として白羽の矢が立ったのは、1900年に開催されたパリ万国博覧会に際してつくられた、パリの終着駅オルセーでした。鉄材とガラスを用いた近代的かつ優美なこの駅舎は建設当時、パリの近代化の象徴として人々の賞賛を集めました。
 しかし完成からわずか35年後。その短いプラットホームは、長くなった列車に対応できず、オルセー駅はほぼその役割を終えることになります。かつて輝かしい賛美を集めた駅舎は、やがて廃墟同然の姿に変わり果ててしまったのです。
▲取り壊しを免れ、着々と美術館へと変貌していくオルセー駅
© Musée d'Orsay
▲1900年、建築家ヴィクトル・ラルー(Victor Laloux)の手により設計されたオルセー駅は、イタリアの女性建築家ガエ・アウレンティ(Gae Aulenti)による内装設計によって美術館に蘇った。
©Musée d'Orsay
 1973年、細々と営業を続けていたホテルも閉鎖されると、取り壊して新たな豪華ホテルを建設しようとの計画が持ち上がります。しかし、解体作業の許可も下り、まさにオルセー駅がパリから姿を消そうとしたとき、市民や政治家を巻き込んだ激しい抗議運動が巻き起こりました。やがてその強い反対の声は、オルセー駅を歴史建造物へと押し上げ、フランス美術館総局の提案によって、19世紀を代表する名建築を最大限に活かした美術館に再生させることが決定したのです。
 こうして19世紀のパリを彩ったオルセー駅は全面的な取り壊しを免れ、美術館として蘇りました。館内には駅舎にあったホテルのダイニングルームがレストランとして再現され、その天井は100年前そのままに華麗なフレスコ画で飾られています。古き良きものを愛し、自由な発想で美術を楽しむフランスの象徴――。それがパリの人々が世界に誇るオルセー美術館なのです。
 
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開館20周年を記念する 写真展「VU’ at オルセー美術館」
▲ホアン・マヌエル・カストロ・プリエトの、暗室で伝統的な手法で仕上げられたカラー写真。美術作品の複製写真というより、作品の痕跡やアラまでも写し取ろうとしたかのよう。
©Juan Manuel Castro Prieto / Agence Vu'
 開館20周年を記念する展覧会として開催されることになったのは、写真展「VU’ at オルセー美術館」。19世紀芸術のなかで果たした写真の役割を重要視するオルセー美術館ならではの展覧会といえるでしょう。
 12月5日から翌7月29日まで地下1階の青少年受付ホールで開催されるこの展覧会には、もうひとつの“20周年”の祝福が込められています。
クリスチャン・コジョル(Christian Caujolle)が日刊紙『リベラシオン(Libération)』の足跡に従って写真エージェンシー「VU’(ヴュ)」を創立したのも、オルセーの開館と同年の1986年のこと。今回の記念展覧会では、「VU’」エージェンシーに所属する最も重要な5人の写真家それぞれが、オルセー美術館をさまざまな角度から切り取り、ルポルタージュすることとなったのです。
▲リップ・ホプキンスによる肖像写真。完成した作品は、モデル自身の存在にかかっているという、ユニークな撮影方法が意表をつく。
©Rip Hopkins / Agence Vu'
▲オルセーを訪れる人々を作品のなかに封じ込めたかのようなスタンリー・グリーンの作品。
©Stanley Greene / Agence Vu'
 スペイン人写真家のホアン=マヌエル・カストロ・プリエト(Juan Manuel Castro Prieto)は、展示室や倉庫にある作品をそのままの状態で、人工照明を用いず、長時間露出で撮影しました。イギリス出身で、現在はフランスで活躍しているリップ・ホプキンス(Rip Hopkins)は、美術館の協力者を肖像写真で表現。長い白いコードの先にポンプをつけ、モデルが自分でカメラのシャッターを切り、ポーズや姿勢も自分で決めることができるようにしたといいます。
ルポルタージュを得意とするアメリカ人写真家スタンリー・グリーン(Stanley Greene)は、美術館の内外にいる観客を撮影。塔の上、通路、ロダンのテラスといった独創的なアングルから撮影し、観光客や野次馬、美術ファン、疲れた人、または道に迷った人など、多様な観客の表情や動きを捉えています。
 オルセー美術館から生み出された作品の数々を展示する独創的な写真展「VU’ at オルセー美術館」。きっと開館20周年をいっそう華やかに彩ることになるはずです。
 
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  PARIS MUSEUM PASS 利用可能施設
オルセー美術館
所在地
 
62, rue de Lille 75343 Paris
Tel
 
+33 (0)1 40 49 48 14
URL
 
http://www.musee-orsay.fr/fr/
休館日
 
月曜日、1/1、5/1、12/25
開館時間
 
9:30-18:00
木曜日は9:30-21:45
入館料
 
<常設展と企画展(〜2010年2/4まで)>
一般:9.5ユーロ
割引:7ユーロ
(18-30歳、木曜日以外の16:15以降、木曜日18:00以降)
18歳未満、身障者、学生の一部、
教員など:無料
※オランジュリー美術館との共通券:13ユーロ
※ロダン美術館との共通券:12ユーロ
情報は予告なく変更となる場合がございます。詳細はMMFにご来館の上おたずねください。
MMFで出会えるオルセー美術館
MMFでは、オルセー美術館の全面協力を得て、オルセーを楽しむための情報を皆さまにご提供しています。MMFのwebサイトでしか楽しめない連載企画も掲載中です。
 
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MMFインフォメーションセンターでは、駅舎から美術館へと変貌をとげたオルセーの歩みを一冊にまとめたカタログをはじめ、多数のオルセー関連図書を閲覧いただけるほか、日本語の館内見取り図やパンフレットをご用意しております。
また、「オルセー美術館展 19世紀 芸術家たちの楽園」のカタログも閲覧・購入いただけます。
 

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