1月27日に東京展が始まったばかりの「オルセー美術館展―19世紀 芸術家たちの楽園」展。同展は1996年に始まった日本におけるオルセー美術館展シリーズの集大成として話題を集めています。今回のサロン講座は本展覧会の日本側のコミッショナーを務められている美術史家の高橋明也先生をお招きしています。
第3回のテーマは「3つのオルセー美術館展をめぐって」。展覧会開催までの裏話など、過去の展覧会に深く関わってこられた高橋先生ならではのお話を伺うことができました。
 
集大成となる「19世紀 芸術家たちの楽園」展公式カタログ
1996年「モデルニテ:パリ・近代の誕生」展公式カタログ
 3回目のサロン講座が開かれた1月17日は、阪神淡路大震災が起きてからちょうど12年目にあたりました。
「じつはちょうど12年前、震災の1週間ほど前に、僕は第1回目のオルセー展視察のため、神戸を訪れていたのです。東京に戻ってすぐにあの惨事が起きたので、当時のことは心に焼き付いています。奇しくも12年目を迎えたこの日に、皆さんにオルセー展の歴史をお話するのは、とても不思議な気持ちです。」
 こうした高橋先生の言葉から始まった今回のサロン講座。前日もオルセー展のスタッフと食事をしながら「10年で3回……。歴史だよね」と話されたばかりという高橋先生は、感慨深げに講座をスタートされました。
 高橋先生自ら「エネルギーを割いて続けてきた展覧会」とお話されるオルセー展。ふだんあまり目にすることのできない作品の搬入や設営の様子、そして修復家による作品点検の現場などの貴重な写真とともに、展覧会の歩みはもちろん、“展覧会の裏側”に肉薄する話題も多く飛び出しました。
 「1996年の『モデルニテ:パリ・近代の誕生』、1999年の『19世紀の夢と現実』、そして今回の『19世紀 芸術家たちの楽園』と、3回の展覧会を通じて私たちは、知られていない面や新しい視点を提供することをつねに心がけてきました」と語られる高橋先生。映し出される写真や先生の言葉からは、作品を飾る展覧会場の壁の色や、ライティング、会場デザインにも腐心された様子がひしひしと伝わってきます。大型展覧会が相次いで開催されるようになった近年、展示される作品や画家に関する知識や情報はさまざまな媒体で見聞きできるようになりました。
けれども展覧会自体の裏側に関する話題は、日本ではまだなかなか一般の方の耳に届かないのが現状です。
こうしたお話を通して、オルセー展に限らず、今後展覧会を訪れる際に注目すべき新たな視点を提示していただきました。
 「展覧会は、美術館で鑑賞していたときには気づかなかったことを発見するとてもよい機会です。例えばAの隣に展示されていたBという作品を、Cの隣に置いてみると今までとは違ったものが見えてくることがあります。これが展覧会の面白さなのです」
今回のオルセー展は「芸術家たちの楽園」がテーマ。高橋先生に教えていただいたように、オルセー美術館ですでに出展作品を鑑賞されている方にとっても、きっと新たな魅力を発見できるよいチャンスとなることでしょう。

 第3回講座のお話を聞いてさらにオルセー展への期待を募らせた様子の参加者の方々。講義後のホワイエでは、コーヒーやお菓子をいただきながら、高橋先生を取り囲んで和やかにお話をされる姿が多く見受けられました。
 さて次回シリーズ最終回のサロン講座では、いよいよ「芸術家たちの楽園」展の内容についてより深くお話いただきます。すでに展覧会をご覧いただいた方も、これからの方も楽しんでいただける内容になることは間違いなし! ぜひお誘いあわせのうえご参加ください。

 日本経済新聞社と高橋明也が協力したページ「オルセー美術館展を追いかけて〜」が公開されているサイト「精密画工房絵草紙」もご覧ください。

1999年「19世紀の夢と現実」展公式カタログ
サロン・デ・ミュゼ・ド・フランス「オルセー美術館展のすべてを楽しむ」は、展覧会レクチャーを含む全4回のシリーズ講座です。次回最終回のテーマは「19世紀 芸術家たちの楽園」展を堪能する。ぜひ次回のサロン講座にもご期待ください。
同館誕生20周年を記念し、オルセー美術館との連携により公開しているMMFサイト内特集ページもぜひご覧ください。
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