2月7日(水)、「オルセー美術館展―19世紀 芸術家たちの楽園」が開催されている東京都美術館で、MMF主催の展覧会レクチャーが開催されました。展覧会を鑑賞する前に、講師の先生によるレクチャーが開かれるのは、サロン・デ・ミュゼ・ド・フランス初の試みです。もちろん講師の先生は、今回の全4回のサロン講座で毎回楽しいエピソードをご紹介してくださっている美術史家の高橋明也先生。本展覧会でも日本側のコミッショナーを務められている高橋先生のお話を楽しみに、当日、会場には多くの方に足を運んでいただきました。
 
集大成となる「19世紀 芸術家たちの楽園」展公式カタログ
▲ 東京都美術館講堂で行われたレクチャーの光景。バジール『バジールのアトリエ、ラ・コンダミヌ通り』の解説に聞き入る参加者の皆さん。

 「東京展のオープニングパーティには120人を超す方が参加され、盛況を呈しました。じつはパーティの参加者数によって、その展覧会の人気度がはかれるのですよ。今回の展覧会は過去3回のなかでも最も質の高い仕上がりといえるのではないでしょうか」

 東京都美術館の講堂にお集まりいただいた参加者の方々は、こんな冒頭の高橋先生の言葉によって、ますます本展への期待を募らせている様子です。今回のレクチャーの時間は約1時間。早足ではありますが、確実におさえておきたい作品の魅力や見るべきポイントを画像とともにお話しいただきました。

 展覧会カタログの表紙を飾るマネの『すみれのブーケをつけたベルト・モリゾ』はオルセー美術館館長のルモワンヌ氏、高橋先生ともに「自宅に持って帰るとしたらこの作品!」と絶賛する本展覧会の注目作品のひとつ。マネのモデルを務めていたモリゾは、のちにマネの弟と結婚することになりますが、この作品からはマネとモリゾの間に流れる親密な空気が伝わってきます。

「本作品はごく最近にオルセーに入ったものです。マネとモリゾの想いが交錯した瞬間をみごとにとらえた、間違いなく近代肖像画の傑作といえるものですね」。そしてそんなマネを尊敬したゴーガンは「この展覧会の影の主役」と、先生はお話を続けられます。詳しくご紹介いただいたのは『黄色いキリストのある自画像』です。この作品はゴーガンがタヒチへと旅立つ直前に制作されたもので、背景にはブルターニュ時代に描かれた自信作『黄色いキリスト』とプリミティヴアートから着想を得て制作されたゴーガン自作の壷が描き込まれています。「まさに新しい世界へと出発するゴーガンの決意を示した作品ですね」と高橋先生。

 モネやルノワールら若き印象派の画家たちの精神的支柱でもあったマネ、彼をことのほか尊敬したゴーガン、そしてそのゴーガンに恋愛にも似た激しい感情を寄せたゴッホ、ゴッホの才能が花開いた南仏の地で、独り制作に没頭したセザンヌ……。マネを中心にまるで見えない糸でつながれたかのような当時の画家たちと、それぞれの“楽園”に対する想いを、展示作品を通して教えていただいたあっという間の1時間となりました。

  「画家の生い立ちや背景を知ることは、作品を見るうえでとても参考になりました。これから会場へ行ってきます!」「今日のお話を参考にしながら、時間をかけて楽しんできます」と、展覧会場へと向かわれた参加者の皆さん。会場では先生にお話いただいた作品の前で、うなずきながら長くたたずんでいる姿が多く見受けられました。大盛況のうちに終了した今回の展覧会レクチャーですが、シリーズ最終回にあたる次回のサロン講座では銀座に戻って、「芸術家たちの楽園」展をさらに掘り下げていただきます。すでに展覧会をご覧いただいた方も、これから見る予定の方も楽しんでいただける内容です。ぜひお誘いあわせのうえご参加ください。
サロン・デ・ミュゼ・ド・フランス「オルセー美術館展のすべてを楽しむ」は、展覧会レクチャーを含む全4回のシリーズ講座です。次回最終回のテーマは「19世紀 芸術家たちの楽園」展を堪能する。ぜひ次回のサロン講座にもご期待ください。
同館誕生20周年を記念し、オルセー美術館との連携により公開しているMMFサイト内特集ページもぜひご覧ください。
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