ミラノサローネの歴史と日本のインテリアデザインの未来

毎年4月にイタリア・ミラノで開催される世界最大規模のインテリアの祭典「ミラノサローネ」。現在、銀座のMMMアートスペースでは、ミラノサローネ出展作家によるインテリアデザイン特集を開催中です(7月28日まで)。今回のMMM講座では、ミラノサローネに出展経験を持つ草木義博氏と曽和治好氏を講師にお迎えし、歴史はもちろん、最近の展示状況についてなど対談形式でお話いただきました。


草木氏の作品〈紙の間〉


曽和氏の作品〈ガーデン・ナノ〉
photo by Satoshi SHIGETA

 イタリア家具やインテリア小物の輸出を促進するために1961年に誕生したというミラノサローネは、現在、6日間で30万人以上の来場者数を誇る世界最大のインテリアの見本市です。講師のひとり、建築デザイナーの草木氏はミラノサローネに9回の出展経験を持つ方です。一方、京都造形芸術大学教授で、庭園デザイナーの曽和氏は5回出展しています。まずは草木氏が、ミラノサローネの歴史を話してくださいました。「もともとは家具だけを展示していましたが、現在では、ファッションや車など、さまざまな業界が参入してきています。逆輸入効果を狙って、キヤノンやパナソニック、東芝といった日本の企業も数多く参加しているんですよ」。実際の写真を交えた分かりやすい説明に会場はぐいぐい引き込まれていきました。
 続いて、出展作品「ガーデン・ナノ」について曽和氏が紹介。2013年・京都デザイン賞(京都府知事賞受賞)をはじめ、5つの賞を受賞している、いわば「デスクトップ・ガーデン」ともいえるこの作品は、会場でも反響が大きかったと言います。京都の枯山水をイメージして作られた作品は、京都の金閣寺や銀閣寺などでも使用されている白色の白川砂をアクリルの箱の中に敷き詰めた"小さな庭"。実際に手の上に乗せた参加者の方は、「思ったより軽い」と驚きの声を出していました。

 お二人のお話の中でとくに印象的だったのは、「ジャパニーズテイスト」が注目されているという点です。ミラノサローネの展示会場ではコケやモミジなどを使った空間構成がされていたり、ミラノの街でも盆栽が流行っていたりと、日本のデザイナーや日本の文化が海外にも大きな影響力を与えているのには驚かされました。


草木義博氏


曽和治好氏

 そして最後には、インテリアデザインの未来についてこんなメッセージをくださいました。「現代になると西洋の文化が入ってきて、それをうまく取り入れている反面、煩雑になっている部分もあります。過去には、何も置かない美しさというものがあった。日本的な意匠のあり方、そして日本人の五感に響く住空間を作っていくべきだと思います」。空気清浄や調湿効果のある炭を使ったインテリアを生み出すなど、意匠のみならず、環境にも配慮したデザインを提案してきている草木氏のこの言葉は大いに納得しました。一方曽和氏は、「日本は、生活の中にアートとデザインを楽しむ空間を提案していかなければならないと思います。西洋のコピーではなく、自分の遺伝子を見直すことによって新しい解釈が生まれ、日本らしさに出会うことになるのです」と語ってくださいました。
 古くから受け継がれてきた日本の文化が、最先端のインテリアとして生まれ変わる――。
日本文化の素晴らしさを改めて感じさせてくれるひとときでした。

[FIN]

ミラノサローネ 2014 伝統と現代が融合するミラノにふさわしい「日本のかたち」展の特集記事はこちら