オランジュリー美術館展覧会カタログ『ハイム・スーチン』Chaim Soutine
オランジュリー美術館展覧会カタログ『ハイム・スーチン』
『ハイム・スーチン』
Chaim Soutine
20×25.5cm/175ページ
フランス語/刊行2012年
本体記載価格/35ユーロ
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異色の画家スーチンの真価を再認識できる一冊

2013年1月21日まで、オランジュリー美術館にて「ハイム・スーチン(1893-1943)、混沌の秩序」と銘打たれた企画展が開催されています。今月はその公式カタログをご紹介します。

スーチンは20世紀前半にパリで活動したユダヤ人画家です。当時は画家を目指す多くの若者が、祖国を離れ、パリへやってきていました。スーチンをはじめ、白ロシア(現在のベラルーシ)出身のシャガール、イタリア出身のモディリアーニ、そして日本の藤田嗣治もそうした画家のひとりで、彼らは「エコール・ド・パリ(パリ派)」の画家と呼ばれるようになります。

モンパルナスにあった集合アトリエ「ラ・リュッシュ(蜂の巣)」には、同じ夢を抱く若き画家たちが集い、貧しさと闘いながらも独自のスタイルを築こうともがいていました。そんな個性豊かな仲間たちの中でもとりわけスーチンは、異色の存在でした。デフォルメされた形態と大胆な筆遣い、カンヴァス上でぶつかり合う強烈な色彩。好んで描くモティーフは、肉塊や動物の死骸など。そんなスーチンの作品は「汚し屋」と酷評され、画商たちからはまったく見向きもされない不遇時代を送ります。しかし、そんなスーチンをモディリアーニや藤田など、エコール・ド・パリの仲間たちは知人の画商に紹介するなどして献身的に支えたといいます。

本カタログに掲載された作品からは、極貧生活の中でスーチンが見つめた、人間の本質や叫びといった生々しい感情が伝わってきます。一方、モディリアーニが描いた《スーチンの肖像》からは、親友だからこそ描くことのできたであろう繊細な一面も見てとれます。肖像画、風景画、静物画などの多岐にわたる作品を通して、スーチンという特異な画家の真価を再認識できる一冊です。

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