『ダリ』
DALÍ
23.3×27.9cm/383ページ
フランス語/刊行2012年
本体記載価格/49.9ユーロ

真摯な芸術家としての新たなダリ像を紹介

今月は、現在パリのポンピドゥー・センターで開催されている「ダリ」展の展覧会カタログをご紹介します。本展は、昨年11月21日に開幕して以来、連日長蛇の列ができている話題の展覧会（2013年3月25日まで）です。閉幕まで１ヵ月を切った現在では、週末ともなると入場までに１時間待ちも覚悟しなくてはならないとか。実はポンピドゥー・センターは、1979年に世界で初めてダリの回顧展を開催し、観客動員84万人を記録したという、画家にとってゆかりの深い美術館。この時の回顧展には、生前のダリ本人も訪れ、大きな話題となりました。

それから30年余りの後、再びパリの地で大きな注目を集めている今回のダリ展は、絵画作品約150点に加え、デッサンや映像、さらには多くの書類資料を通して、シュルレアリスムの奇才画家ダリの素顔に迫る展覧会です。ダリといえば、その不可思議な作品はもちろん、詩人ポール・エリュアールの妻だったガラを巡る略奪婚、大胆なパフォーマンスなどで、美術界のスキャンダルメーカーとしての印象が強い画家のひとり。しかし、そんな派手なイメージの陰には、制作に打ち込む真摯なアーティストとしての一面もありました。

カタログでは、類まれな想像力と確かな画力を武器とした “芸術家ダリ”の姿を、実に丁寧に読み解いています。その作品に色濃く残るラファエロやゴヤなどオールドマスターらの影響、詳細な作品解説に加え、画家自身による手記や雑誌記事、作品の裏側を物語る資料写真などを収載した充実した内容は、ダリ好きの方にはもちろん、これまであまり興味のなかった方にも、新たなダリ像を提示してくれることでしょう。また、わたしたち読者のほうが、ダリにのぞき見られているような気分にさせられる表紙のデザインにも、奇才画家のカタログとしてふさわしい遊び心が溢れています。