美しきバラが咲き誇る『バラの画家』ルドゥーテの植物図譜
『バラ図譜 ピエール=ジョゼフ・ルドゥーテ』
『バラ図譜 ピエール=ジョゼフ・ルドゥーテ』
Les Roses Pierre-Joseph Redouté
編著者/上田善弘
38.6×29.6cm/184ページ
日本語/刊行2008年
発行元:河出書房新社
価格:14,700円(税込)

精密さと芸術性が融合したルドゥーテのバラ

バラ好きの方には待ちに待った季節になりました。バラ愛好家の多いイギリスには、日本の「雨降って地固まる」と同様の意味の「4月の雨は5月のバラを咲かす」ということわざがあります。ここには、5月に花開くバラを心待ちにする人々の気持ちがよく表れています。

今月ご紹介するのは“バラの画家”として名高いベルギー出身の植物画家、ルドゥーテ関連の植物図譜3冊です。ルドゥーテは、植物画の天才と称され、マリー=アントワネットやナポレオン1世の皇后ジョゼフィーヌに寵愛されました。とくにジョゼフィーヌは、居城であったマルメゾン城に世界各国からの品種を集めたバラ園をつくるほどの愛好家でしたが、ルドゥーテは皇后のバラ園への出入りを許され、珍しいバラを驚くほどの繊細な筆致、巧みな色使いで描き出しました。そうして生まれたのが『バラ図譜』です。

ルドゥーテが植物画の天才といわれるのは、作品の美しさだけが理由ではありません。花ひとつひとつが持つ、それぞれの特徴を見事にとらえて描き出すその精密さにもあります。植物学的な正確さと芸術性を兼ね備えたルドゥーテのバラは、単なるボタニカルアートにとどまらない魅力をまとい、多くの人々の心を震わせました。

今回ご紹介している『バラ図譜』は、1817〜1824年にかけて刊行された初版本を、高品質印刷で色彩豊かに再現した原寸大の復刻版。169点のバラが1ページに1点ずつ収載されています。またルドゥーテが最晩年に制作した『美花選』は、専門家向けに刊行された『バラ図譜』に対して、一般読者を想定して制作された植物図譜。バラだけでなく、可憐なブーケやみずみずしい果実も含み、世界各地の美しい花144点をルドゥーテ自身が厳選して収録しました。ここにご紹介する『美花選』は、その当時の原本を底本とした実物大の高品質印刷の復刻版です。そして『バラ図譜[普及版]』には、貴重な肉筆画2点も特別収録されています。いずれもルドゥーテの筆によって花開いた美しき花々を楽しめる図譜ばかりです。

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