新たなゴッホ像に迫る一冊 『ファン・ゴッホとその作品』
『ファン・ゴッホとその作品』Van Gogh at work
『ファン・ゴッホとその作品』
Van Gogh at work
著者/Marije Vellekoop
30.3×25.1 cm/204ページ
英語/刊行2013年
発行元/Yale University Press
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知られざるゴッホの制作の秘密をひもとく

「自分の仕事のために僕は、命を投げ出し、理性を半ば失ってしまい――」(『ゴッホの手紙 テオドル宛』硲伊之助訳)

1890年7月、弟のテオ宛の手紙を懐に抱いて、オーヴェール=シュル=オワーズの麦畑で自らの手によって37年の生涯に幕を下ろしたフィンセント・ファン・ゴッホ。日本でもっとも親しまれている西洋画家のひとりでしょう。MMMブティックにも今年2月からゴッホ美術館の公式グッズが仲間入りしました。それにちなみ、今月の一冊でもゴッホ関連の書籍をご紹介します。

ゴッホはその生涯で1,600点という膨大な作品を描きましたが、画家として本格的に活動したのは後半生のわずか10年です。単純に計算するとおよそ2日に1枚という驚くべきスピードで作品を仕上げていたことになります。冒頭にご紹介した手紙の一文やその制作ペース、激しい画風などから、ゴッホは激情にかられて絵を描いていた画家と思われがちです。しかし、本書からは、遠近法や色彩理論を冷静に分析するもうひとりのゴッホ像が浮かび上がります。

ゴッホが実際に使用していたパレット、遠近法を会得するために訓練を重ねたデッサン帳、愛用の絵筆や絵の具チューブ、さらには作品部分の超拡大写真によって改めて見えてくる厚塗り技法など、本書のページを繰るたびにゴッホの制作の秘密を再発見できます。ともすると衝撃的なエピソードの陰に隠れてしまいがちな“一流画家”ゴッホの真の姿に出会える一冊です。

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Update : 2014.4.1
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