ルーヴル美術館で開催された展覧会の公式図録『フェルメールと風俗画の巨匠たち』
ルーヴル美術館で開催された展覧会の公式図録『フェルメールと風俗画の巨匠たち』
『フェルメールと風俗画の巨匠たち』
著者/BAKKER, Piet
31×25cm/447ページ
フランス語/2017年
出版社/Somogy éditions d'Art
本体価格/39ユーロ
※この情報は2017年11月更新時のものです。
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17世紀オランダで発展した風俗画の魅力が満載

現存する真筆は30数点と寡作な画家でありながら、いまや世界中で高い人気を誇るヨハネス・フェルメール。17世紀オランダ絵画の黄金時代を代表する画家のひとりです。静謐でどこか謎めいた雰囲気をたたえるフェルメールの作品は、もちろん日本でも大人気。彼の作品が来日すると、長蛇の列ができるのは、多くの美術ファンの知るところです。

今月ご紹介する1冊は、2017年2月から5月まで、パリのルーヴル美術館で開催された展覧会の公式図録です。400ページを超える本書は、17世紀オランダの社会的・文化的背景にも触れながら、フェルメールを中心に、同時代の風俗画家たちの作品を紹介する充実の内容になっています。

17世紀オランダは、世界に先駆けていち早く市民社会を確立しました。そのため、王侯貴族が画家たちのパトロンであったフランスなど、ほかのヨーロッパ諸国とは異なり、オランダで絵画を買い求めるのは、富裕な市民たちでした。そうした動きは、描かれる主題にも大きく関連してきます。画家たちは、一般市民たちが主役のなにげない日常の風景をカンヴァスに描くようになりました。こうしてオランダでは、ほかの国々では絵画のヒエラルキーのなかで下級とされていた「風俗画」が豊かに発展していったのです。

フェルメール作品のなかでも人気の高い作品《牛乳を注ぐ女》が表紙になった本書では、フェルメールと同時代に活躍した画家によるさまざまな風俗画を美しい図版で見ることができます。レンブラントの弟子であったヘラルト・ドウ、華やかな風俗画を得意とし、フェルメールの好敵手でもあったヘラルト・テル・ボルフ、精緻な描写で洗練された風俗画を描いたフランス・ファン・ミーリスなど、日本ではまだあまり馴染みのない画家たちの作品もフェルメールに負けず劣らず魅力たっぷりです。

聖書や歴史の知識をあまり必要とせず、カンヴァスのなかで生きる当時の人々の暮らしをのぞき見するかのように、肩の力を抜いて鑑賞できるのが風俗画の大きな魅力のひとつ。フェルメールの生きた17世紀オランダにタイムスリップしたかのように楽しむことができる1冊です。

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Update : 2017.11.1
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