「公の肖像画、  私的な肖像画1770-1830」
 
 今月ご紹介する1冊は、現在パリのグランパレ・ナショナル・ギャラリーで開催中の「公の肖像画、私的な肖像画」展の公式カタログです。
 古代ギリシア・ローマ時代から人々は権力者や家族の姿、ときには自らの姿を“記録”してきました。当時は、肖像画はほとんど存在せず、彫刻や浮き彫りで表されることがほとんどでした。肖像画が登場するのは、現実への関心が高まってきた中世末期からルネサンス以降のこと。とくに肖像画が完全に独立したジャンルとなった16世紀には、その形式も半身像や4分の3身像、また全身像など飛躍的に多様化しました。そしてこの頃の肖像画は、自らの地位を象徴するいわば“公の肖像画”であったのです。
そんな肖像画の性格は18世紀後半から19世紀になると、少しずつ変化を見せ始めます。客観性が重視された注文肖像画とは別に、画家個人の感性や主観が投影された“私的な肖像画”が登場し始めたのです。お気に入りの画家や交流のある画家に、家族や自分の姿を描いてもらう人々も登場し、肖像画は生活の一幕をとらえる、より身近なものへとさま変わりしていきました。
 
「公の肖像画、私的な肖像画1770-1830」
Portraits publics, portraits privés 1770-1830
23×30.5cm/384ページ
フランス語/刊行2006年
価格/13,965円(税込)
本体記載価格/49ユーロ

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  本書では、こうした肖像画の歴史はもちろん、今回の展覧会に出品された作品を紹介し、そこに描かれた人物やその背景、また画家との繋がりにも言及しています。イギリスの画家レイノルズや女流画家ヴィジェ=ル・ブラン、またナポレオン付きの画家でもあったダヴィッド、そして新古典主義の巨匠といわれるアングルなどの肖像画を見れば、その時代に生きた人々の声が聞こえてくるかのようです。
 
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