「サツマ―エキゾティスムから   ジャポニスムへ」薩摩焼パリ伝統美展カタログ

海を渡った日本の美「薩摩焼」 日仏の交流を物語る一冊

 今年2008年は、日仏交流150周年という、記念すべき年です。1858年(安政5)10月、日仏修好通商条約が締結され、日本とフランスの交流が始まりました。今月、ご紹介するのは、そうした日仏交流の歴史の一端を物語る一冊。2月18日まで、フランスのセーヴル陶磁器美術館で開催中の展覧会「薩摩焼パリ伝統美展」のカタログです。
 日本とフランスの交流が始まると、フランスからのお雇い外国人によって、浮世絵や絵画、そして陶磁などをはじめとする、日本の多くの伝統美が海を越えて紹介されるようになりました。その異国情緒あふれる日本の美は、フランスの人々を魅了し、「ジャポニスム」の流行の端緒を生み出したのです。
 そして、こうした「ジャポニスム」が爆発的な人気を誇ることになったのが、1867年に開催された第2回パリ万国博覧会でのことでした。この博覧会で人々の注目を集めたもの―。それが、日本の鹿児島からもたらされた「薩摩焼」でした。
 17世紀、茶の湯文化の興隆とともに鹿児島で盛んに生産されるようになった薩摩焼は、白地に赤や青、金彩が施される豪華さと、土と釉薬の質感がもたらす繊細な魅力を併せ持っていました。遠く東の果ての島国から紹介されたこの薩摩焼の美しさに、西欧の人々はたちまち虜になったのです。

 
「サツマ―エキゾティスムからジャポニスムへ」
Satsuma de l'exotisme au japonisme
28.8×22.2cm/176ページ
フランス語/刊行2007年
本体記載価格/39ユーロ
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 本書では、こうした薩摩焼の歴史はもちろん、日本陶磁器の歴史や、当時の日本とフランスの歴史的背景、その文化的交流などを、図版を用いながら紹介するとともに、本展に出品された薩摩焼の名品の数々が収載されています。日本の美意識の源のひとつとなっている茶の湯で使われた品々に加え、薩摩焼に影響を受けてフランスで制作されたセーヴル窯やエミール・ガレ、ドーム兄弟の作品なども美しい写真とともに見ることができます。
 ひとつひとつの作品を見比べて、日本とフランスの違い、また反対に共通点を探してみるのも楽しいですね。
 
 
 
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