『フランスの珠玉のファイアンス陶器』

「フランスの珠玉のファイアンス陶器」
Histoire de la Faïence Fine Française
28.4×22.5cm/520ページ
フランス語/刊行2008年
本体記載価格/75ユーロ
フランス陶磁器の歴史を辿る
愛陶家垂涎の一冊
 今月ご紹介する1冊は、2008年10月22日から2009年2月23日までセーヴル陶磁器博物館で開催されていた展覧会のカタログです。セーヴルといえば、18世紀のルイ15世治世時に開窯した長い歴史を誇るフランス屈指の名窯。ルイ15世の愛妾ポンパドゥール夫人がその発展に尽力したことは広く知られていますが、今回の展覧会はその長い伝統がどのように築かれてきたかを詳細に辿り、フランスの陶磁器の魅力を再発見する試みとなりました。
 そして全19章、520ページからなる本書は、セーヴルはもちろん、フランス国内やイギリスなどヨーロッパ各国の名窯の歴史を含めた「ヨーロッパ陶磁器史」とも呼べる大書となっています。セーヴルで磁器製作が始まったきっかけともいえる18世紀初頭のカオリン(白磁土)の発見から、イギリスとフランスでのファイアンス陶器の誕生、さらにフランス革命後のナポレオンの時代に起こったアンピール様式や19世紀にフランスの美術界を席巻したジャポニスム、印象派との関連性までを、詳細なテキストと美しい図版の数々で辿ることができます。また、セーヴルは18世紀の開窯以来、作品の裏面にブランドマークを刻印していますが、セーヴルをはじめとしたブランドマークの変遷がひと目で分かるページもファンには嬉しい情報です。伝統を守りつつ、時代の波に飲み込まれることなく変化を遂げ続けているセーヴル。その「伝統と革新」の歴史をつぶさに俯瞰することができる愛陶家垂涎の一冊です。