『マネとモダン・パリ』


『マネとモダン・パリ』
Manet et le Paris moderne
上製/22.8×30cm/329ページ
日本語/刊行2010年
価格 : 2,500円(税込み)

知っているようで知らない“幻の巨匠”
マネの魅力の謎を解く豪華カタログ

2010年4月6日に東京・丸の内に開館した三菱一号館美術館。待望のオープニングを飾る展覧会の“主役”に選ばれたのは、“近代絵画の創始者”と称されるエドゥアール・マネです。パリという都会を生涯愛し、新しい美を追求し続けた画家の姿勢は、この新しい美術館のポリシーとぴたりと符合しました。三菱一号館美術館の館長高橋明也氏自身が語る展覧会の見どころと、展覧会レポートはMMFのwebサイトでもご紹介していますが、今月は「マネとモダン・パリ」展と画家マネの魅力が凝縮されたカタログをご紹介しましょう。

「……マネの作品の前に立つ人は、まずその観る者を惹きつけて離さない強い磁場のような画面に惹き込まれる。そして少し離れて次の作品に視線を移しながらやがて少々困惑するだろう。……マネの作品には、ある種の統一した印象というものが欠けているからだ」

高橋館長自身がカタログの中でこう著している通り、マネの作品は非常に多様なイメージを持っています。かつて美術の教科書で多くの人が出会った≪笛を吹く少年≫といった作品からも分かるように、マネが近代絵画に及ぼした影響は多大なものであるにもかかわらず、マネという画家の実像が茫洋としていて捉えがたいものと感じるのはなぜでしょうか?

そんな“幻の巨匠”の姿をより克明に浮き彫りにするのに、今回の展覧会カタログは大きな助けになるでしょう。冒頭の高橋館長によるテキストからは、今回のオープニング展にマネを選んだ情熱の一端が垣間見られます。また収載された共同コミッショナーであるオルセー美術館主任学芸員カロリーヌ・マチュー氏のエッセイ「マネとパリ」からは、今回の展覧会の重要なサイドストーリーであるマネの生きた時代のパリの光景が、さらにはマネ研究者ジュリエット・ウィルソン=バロー氏のテキスト「アトリエのエドゥアール・マネ」からは、第一線の研究者ならではの新しい発見が読みとれるでしょう。

もちろん「マネとモダン・パリ」展の出品作が美しいカラー図版で収載されており、とくに作品中の注目すべき箇所は、拡大図版も掲載されています。また、残念ながら今回は展覧されなかった≪草上の昼食≫や≪オランピア≫をはじめとしたマネの代表作品もカラー図版で見られるという丁寧なつくり。今までベールに隠されてきたマネという画家の素顔を知り、その作品に宿る“磁場”の魅力の謎を解くには必読の一冊です。

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