『アール・ブリュット ジャポネ』


『アール・ブリュット ジャポネ』
ART BRUT JAPONAIS
19.9×23.5cm/223ページ
フランス語/刊行2010年
序文/北岡賢剛、マルティーヌ・リュサルディ

日本から発信される新たな文化
パリで話題の展覧会のカタログ

皆さんは「アール・ブリュット」という言葉をご存じですか?

フランス語で「生(き)の芸術」という意味のこの言葉は、フランスの画家のジャン・デュビュッフェによって作られました。デュビュッフェは、子どもや正式な美術教育を受けていない者が、発表を目的とせずに独自に創作した作品に対する畏敬の念から、この言葉を作り出しました。現在は、障がい者の手による作品に対してよく使われ、その無垢で自由な個性が横溢する作品は、世界中から注目を集めています。

今回ご紹介するのは、現在、モンマルトルの丘の麓に位置するパリ市立アル・サン=ピエール美術館で開催されている「アール・ブリュット ジャポネ」と銘打たれた展覧会のカタログです。

滋賀県にある「ボーダレス・アートミュージアムNO-MA」が協力し、2010年3月に開幕したこの展覧会は、当初9月までの予定でしたが、2011年1月2日まで会期が延長されました。本展では、マルティーヌ・リュサルディ館長自らが来日し選出した日本人作家63名、約700点にのぼる作品が展示されています。芸術の都パリに渡った日本の「アール・ブリュット」。それは、フランスの人々に鮮烈な印象を投げかけています。

「アール・ブリュット」作品には、文字が使われているものが多くあります。そして日本の「アール・ブリュット」が高い評価を得ているのも、この特徴と無縁ではありません。漢字やひらがな、カタカナという、豊富な文字の形態そのものが、エキゾチックで美しいものと認識されているからです。今回出品されている作品の中にも、漢字とひらがなで表記した作者の名前を並べることのみで、独特の世界感を表現したものがあります。私たちが日ごろ見落としてしまっている、すぐ隣にある「アート」に、思いもよらない表現方法で気付かせてくれる――。そんな作品がこのカタログには詰まっているのです。

ページを繰る度に現れる個性豊かなデッサン、絵画作品、立体作品は、私たちに創造性とは何か、芸術とは何か――という深淵な問いを投げかけてくれることでしょう。

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