『イヴ・サンローラン&ピエール・ベルジェ・コレクション世紀のオークション』


『イヴ・サンローラン&ピエール・ベルジェ・コレクション 
世紀のオークション』
La Collection Yves Saint Laurent Pierre Bergé
La Vente du Siècle
31.5×24.7cm/320ページ
フランス語・英語/刊行2009年
価格/20,582円(税込)

▲高値で落札されたアイリーン・グレイの《ドラゴンのソファ》を紹介するページ
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「イヴ・サンローラン アートのある暮らし」展

期間:5月28日(土)まで
会場:銀座MMF3Fギャラリー
映画の公開されるこの機会に、MMFでは、上記のカタログでも紹介されている、イヴ・サンローランとピエール・ベルジェの美術コレクションから、現在、フランスの美術館で見ることのできる作品を集めて、パネルで展示中です。
© RMN / Jean-Gilles Berizzi
 

サンローラン没後のオークションを記念する
豪華カタログ

“モードの帝王”イヴ・サンローラン──世紀前半のココ・シャネルとともに、20世紀のファッション界を牽引した彼が惜しまれつつこの世を去ったのは2008年のことでした。それから3年、そのドキュメンタリー映画の日本公開がついに始まりました(4月23日より全国上映)

映画でも明らかにされますが、サンローランはすぐれた美術コレクターでもありました。生前の彼は、公私にわたるパートナーであったピエール・ベルジェとともに、すばらしいコレクションを築き、死の翌年の2月と11月に開かれたオークションで披露され、大きな話題を呼んだのです。今回、MMFのインフォメーション・センターからご紹介するのは、その2月のオークションを記念してクリスティーズ社と出版大手フラマリオン社が出版したカタログです。


この本の副題に「世紀のオークション」とあるように、2月23日からの3日間、グラン・パレで行われたオークションは、ひとりのアーティストの没後の売り立てという規模を超えた、 “歴史的事件”となりました。出品された美術品は733点、落札額の総額は3億4,200万ユーロ(約429億円)。小さな国の国家予算にも匹敵するほどの金額で、個人所蔵品の競売としては過去最高額を記録したのです。本書の冒頭には、ピエール・ベルジェが「まるでグリフィス映画のよう」と形容した驚くべきオークションの様子が写真で綴られています。


このカタログの醍醐味は、ピエール・ベルジェの序文にある「ただひとつ言えることは、僕たちふたりはこうしたコレクションに囲まれて、かくも自然に暮らしていたということだ」というくだりに集約されています。出品作の中から主要作品が解説付きで大きくクローズアップされていますが、その多くに対して、それらの作品がサンローランの生前にはどのように飾られていたかが分かる写真が収録されているのです。アイリーン・グレイのソファをはじめとする豪華な調度品が置かれた部屋で、本棚の上にはアングルの肖像画、その上の壁にはキュビスム時代のピカソ、その左手にはジェリコー、中央にはブランクーシのオブジェ、そして所狭しと無造作に置かれた骨董の装飾品の数々──この本は、20世紀モードの巨匠がどのような美に惹かれ、インスパイアされたかを知ることができるだけではありません。まるで美術館のような空間で、早くも“伝説”となりつつあるカップルが、どのように“自然に”暮らしていたのか──それを想像しながらページを繰るだけでも十分に楽しめる一冊です。


また、巻末にはオークション・カタログが収録されており、落札額も明記されているので、「このピカソの落札額は……」と予想しながら、ちょっとだけ「世紀のオークション」に参加した気分を楽しめるのも魅力です。ちなみに、上の写真にあるアイリーン・グレイのソファの落札額がいくらか想像がつきますか?正解は2,190万5,000ユーロ(約27億円)。オークションの収益はすべてピエール・ベルジェ―イヴ・サンローラン財団に寄付され、エイズ撲滅の研究資金に使われるそうです。