『海辺の避暑地 18世紀から20世紀の建築と都市計画』


『海辺の避暑地 18世紀から20世紀の建築と都市計画』
Villégiature des bords de mer - Architecture
et urbanisme XVIIIe - XXe siècle
24×28cm/399ページ
フランス語/刊行2010年
本体記載価格/60ユーロ
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“ヴァカンスの国”フランスの歴史を紐解く写真集

今年も7月20日(水)からの1ヵ月間、都会の真ん中でヴァカンス気分を満喫できるイベント「パリ・プラージュ(Paris Plage)」が開催されます。セーヌ河畔に即席のビーチを造ってしまうこのイベントの賑わいからも分かるように、フランス人は海が大好き。毎年7月から9月のヴァカンス・シーズンには、多くの人々が都会を離れて海辺の避暑地へと向かいます。今月は、そんなフランス人とビーチ・リゾートの歴史を紹介する一冊をご紹介します。


『海辺の避暑地 18世紀から20世紀の建築と都市計画』と題されたこの本は、フランス国内5,500kmの海岸線上に点在する避暑地の歴史を、500を超える古写真やイラスト、地図などで紐解くという、他に類を見ない「リゾート写真集」です。300ページを超えるボリュームで、1章ではイギリスの影響から上流階級が海水浴へ出掛けるようになった18世紀後半から、有給休暇法が制定された1930年代、庶民もこぞってリゾートへ出掛けるようになった戦後、そして現在、とフランスにおけるヴァカンスの歴史を丁寧にたどります。

2章では、リゾート地に造られたさまざまな施設や建築がタイプ別に分類されて写真とともに紹介されています。例えば、〈プロムナード、インフラ、備品〉の項にはドーヴィルの浜辺のプロムナード、〈住む、休暇小屋からヴィラまで〉ではル・コルビュジエ晩年の傑作と名高い「ル・コルビュジエの休暇小屋」や以前にマダムのミュゼ訪問で紹介した「ヴィラ・グレック・ケリロス」、〈水浴の文化 いい空気と太陽〉ではブルターニュ地方ミラマールのタラソテラピー施設などが紹介されており、多彩な角度からフランスのリゾート文化の歴史を検証しています。それぞれの施設には、ひと息で読むのにちょうどいい簡潔な解説文とともに、所在地や建築家、建築年などの情報が付されているので、実際に施設を訪れてみたい建築ファンにもおすすめの一冊です。

3章では、モンテ・カルロやニースといった避暑地における都市計画が、カジノの設計プランなどの資料とともに詳しく解説されています。


昨年、ロイター通信が発表した調査によれば、フランスは「有給休暇を使い切る国」の堂々第1位。1ヵ月近い長期休暇はフランス人にとって当然の権利です。同調査最下位の日本人にはうらやましい限りですが、この本をご覧になれば、フランスにおけるヴァカンスが単なる制度ではなく、長い歴史に裏付けされた文化であることがお分かりいただけると思います。

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