フランスが誇るもうひとつの芸術 写真文化をより知るために

『ナダール』 
Nadar
22×28cm
フランス語/96ページ/刊行2001年
本体記載価格:21.34ユーロ

『カイユボット兄弟 画家と写真家の交流』
Dans l'intimité des frères Caillebotte Peintre et Photographe
24.2×28cm
フランス語/240ページ/刊行2011年
本体記載価格:39ユーロ
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写真と絵画の"親密な"関係をたどる2冊

実用的な写真術が“発明”されたのはどこの国か、ご存じですか? それは1839年、フランスでのことでした。フランスの科学アカデミーと美術アカデミーの合同会議の席上で公表された写真術「タゲレオタイプ」が、現在わたしたちが親しんでいる写真の始まりだったのです。写真発祥の地フランスでは、写真をひとつの芸術文化として非常に大切にしています。パリでは秋には<フォトケ>や<パリフォト>といった大規模な写真の展覧会が隔年で催されます。そこで今月、MMFがご紹介するのは、フランスが誇る写真文化をテーマにした2冊です。
 まず1冊目は印象派の画家たちとも深い交流を持った写真家ナダールにフォーカスした『ナダール』です。肖像写真を得意としたナダールは、写真家としてだけでなく、ジャーナリスト、風刺画家、評論家、そして気球乗りという多彩な顔を持つ、19世紀中頃のパリの有名人でした。第1回印象派展も開かれたパリのサン・ラザール通りのスタジオには、詩人ボードレールや画家ドラクロワ、音楽家リスト、女優サラ・ベルナールなど、当時パリで名を馳せていた有名人や知識人が集まり、写真館というよりも、サロンといった趣だったといいます。本書ではこうしたナダールの活躍はもちろん、彼が撮影したポートレート、さらには直筆の風刺画も紹介されています。プッチーニのオペラ『トスカ』のタイトル・ロールに扮したサラ・ベルナールや、死の床の文豪ヴィクトル・ユゴーなど貴重なショットが満載の1冊です。
 2冊目は、カイユボット兄弟をテーマにした展覧会カタログ『カイユボット兄弟 画家と写真家の交流』です。パリの都会に暮らす人々を生き生きと描いた画家の兄ギュスターヴと弟マルシアルが撮影した写真を併せて展示したこの展覧会は、パリのジャックマール=アンドレ美術館で開催され、好評を博しました。近代都市へと変貌を遂げていくパリの街とそこに生きる人々が、絵画と写真という二つの表現媒体によってとらえられています。ページを繰っているとまるで19世紀パリをテーマにした短編映画を見ているよう――。カイユボット兄弟がとらえた「一瞬のパリの表情」は、時を経ても輝きを失うことなく私たちの心に響いてくることに驚かされます。

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