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フォンテーヌブロー宮殿─第2帝政期の美術マダムの連載の一部(10館)が本になりました。 バックナンバーを読む
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やはり同じ「グロ・パビヨン」内にある小さな「ナポレオン3世の劇場」へと参りましょう。この劇場は建築家エクトール・ルフュエル(1810-1880)の傑作。現在、フォンテーヌブロー宮殿が人気を取り戻した背景には、この劇場の改装がとりわけ素晴らしかったことがあるようです。修復によって劇場は在りし日の輝きを見事に取り戻しました。磨き直された金や、埃を払った布類はかつての鮮明な色で輝きを放ち、その素晴らしい装飾は、類い稀なる洗練と優美さで、わたくしたちを魅了するのです。

皇帝夫妻の命により建設された劇場は、着工から2年後の1857年5月、ロシア皇帝アレクサンドル2世の弟、コンスタンチン大公(1779-1831)の外遊の際にこけら落としの公演が開かれました。大回廊を通って、劇場のエントランスとホールへと行きましょう。丸天井を頂く楕円形の可愛らしい小さな間が、客席に向かって開いています。光のきらめきを受け、玉虫色に輝くキンポウゲ色(黄色)のテキスタイル──なんと素晴らしい光景でしょうか。ヴェルサイユ宮殿のマリー=アントワネットの小さな劇場から着想を得たというこの劇場は、金、そして色彩に溢れ、さらにナポレオン3世様式の特徴である豊かな装飾まで施されているのですから。

ギャラリー席の家具類は、ルイ14世様式で、白地に金色で枠取りされ、椅子には黄色いダマスクの布が張られています。皇帝のボックス席の部分が張り出していて、舞台中心に向かい合う部分が強調されています。バルコニーは、格子模様を背景に自然の花を描いたモチーフで美しく装飾されています。最上階は、壁の曲面に金箔を施した木の格子組をはめた丸窓があります。これは、保安担当者と粗末な身なりの人向けの席です。青い布を張った平土間の座席は、軍人たちのものでした。居心地をよくするために、床には、くすんだワイン色の地にバラ色の花のモチーフが描かれ厚いカーペットが敷いてあります。金箔を施したブロンズとクリスタルの大きなシャンデリアは、落下してしまっていましたが修理され、電気式となりました。天井の絵はアンドレ・シャルル・ヴォワユモ(1823-1893)作《音楽と詩のアレゴリー》で、こちらも修復を終えました。

長さ45m、幅15m、着席で430人を収容するこの楕円形の劇場は、じつは、最後の宮廷劇場でした。維持費はあまりに膨大で(役者と舞台装飾はパリから連れて来ました)、実際に公演が行われたのは15回ほどだったといいます。そして帝政が崩壊すると、舞台は完全に幕を閉じ、暗い劇場は悲しくも忘却の彼方へと追いやられたのです。こうした状況が150年続き、すべて(舞台と舞台装飾、機械装置など)がそのまま保存されました。まさに奇跡としか言いようがありません。

改修工事を経た今、劇場はかつての魅力を取り戻しました。さらに、美術館のように見学できるよう、そして特別な場合にここで演劇を上演できるように設備の近代化も図られました。

こうして一般公開されたナポレオン3世の劇場と執務室、皇后の執務室、そして「中国美術室」はいずれも見事な空間。回り道をしてでも、ぜひ、フォンテーヌブロー宮殿をお訪ねになってみてください。さらに、宮殿のほかの年代のコレクションを展示した部分(ルネサンス期、17世紀、18世紀など)を訪ね、フランス王家の歴史やそれぞれの時代にここで生まれた芸術品に触れることもお忘れなく。フォンテーヌブロー宮殿はフランスの宮殿のなかでも最も素晴らしい家具や装飾品のコレクションに出会える場所なのですから。

友情を込めて。

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Update : 2014.12.1

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