シラク大統領博物館
 
80パーセントを超える高い投票率で世界中を驚かせた、フランスの大統領選挙。
5月22日に始まった総選挙を経て、フランスはニコラ・サルコジ氏の就任と共に新しい共和国大統領を
迎えることになりました。
2期12年を務め、政界に確かな足跡を残して引退した大統領ジャック・シラク氏ですが、その名はフランス美術界にも
刻まれています。2006年に開館したケ・ブランリ美術館誕生の立役者となったことはもちろん、
シラク氏は、大統領任期中の2000年にその名を冠した博物館も創設したのです。
©Didier Boy de la Tour
周囲に溶け込んだ美しい建築に収められた 5000点を超える充実したコレクション
▲博物館のエントランス。
© Didier Boy de la Tour
 フランス中西部コレーズ県。モネディエール山地の南東端に人口わずか300人の小さな村があります。ジャック・シラク(Jacques chirac)氏の生まれ故郷サランです。2000年12月、この地に「ジャック・シラク大統領博物館」がオープンしました。
大統領として国内外を訪問するたびに、それぞれの地で素晴らしい贈り物を受け取ったシラク氏は、それらの品々を人々に公開するための博物館を自らの郷里に建設したのです。
 2期12年間にわたって、フランス共和国大統領を務めたシラク氏。その贈答品を収めたこのミュゼのコレクションは、じつに多彩なものです。2000冊の書物を含めて5000点以上にのぼり、そのなかから随時150点(彫刻、絵画、模型、衣装など)が常設展示されています。世界の大多数の国の代表者から贈られた品々が収められており、なかには故小渕恵三首相から贈られた相撲のまわしといった、日本人には馴染み深いものあります。
▲《横綱貴乃花のまわし》1990年1月7日にエリゼ宮で開かれた晩餐会の際に、日本の故小渕恵三首相から贈られた。
▲《真珠で飾られたバミルケ族の仮面》
カメルーンのポール・ビヤ大統領から贈られた。
▲《オアシスにいるらくだの置物》
1996年7月にサウジアラビアを公式訪問した際、国王ファハド・ビン=アブドゥルアズィーズから贈られた。

 現代建築の巨匠ジャン・ミッシェル・ウィルモット(Jean-Michel Wilmotte)が構想したこの美術館は、シンプルで美しいラインの建物群で構成されています。いかにも現代建築らしい佇まいでありながら、コナラやスレート、御影石といった素材を用いることで、周囲の景観に溶け込んだ建築はじつに見事です。

     
▲周囲の環境に溶け込んだ博物館。
©Didier Boy de la Tour
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魅力的な特別展で多くの人々を惹き付ける 博物館と地方との素晴らしい関係
▲拡張工事を終えた博物館。
© Didier Boy de la Tour
 この博物館は、優れた文化施設の存在が、地方をより魅力的なものにすることを証明したひとつのモデル・ケースともいえます。博物館のコレクションそのものが年を重ねるごとに充実の度合いを増していることに加えて、定期的に開催される特別展がいずれも素晴らしい内容のものであることからこの博物館は多くの人々を惹き付け、5年前のオープン以来、じつに20万人以上の来館者を迎えているのです。
これは、サラン村や博物館を管理するコレーズ県はもちろん、リムーザン地方全体にとっても素晴らしいことといえます。
 
 さらに、数ヶ月前には、2005年に始まった拡張工事が終わり、見学可能な特別収蔵室や「資料」展示室、アトリエ、図書館などの新しいスペースも誕生しました。誰もが自由に見学することができる広大な特別収蔵室には、今後、コレクションにある全種類の作品が展示される予定です。図書館には、大統領から寄贈されたおよそ1万冊の蔵書(その大部分が世界中から献呈された書物)があり、博物館の資料センターも併設しています。また、若者たちに人気があるのは、このミュゼで行われる多彩なアクティヴィティです。
▲ワークショップの部屋。
© Didier Boy de la Tour
素晴らしい設備を備えたオーディオビジュアルスペースは、講演会やシンポジウムのほか、コンサートや上映会、ワークショップといったさまざまなプログラムを可能にしたのです。
 
▲博物館にある書店。
© Didier Boy de la Tour
 大統領のミュゼといえば、ブルゴーニュ地方のニエヴル県に「ミュゼ・ド・セプテナ(7年任期の美術館)」と呼ばれる美術館もあります。18世紀に建てられた旧聖クレール修道院内にあるこのミュゼには、フランソワ・ミッテラン(François Mitterrand)元大統領が任期中に受け取った公私の贈物の品々が所蔵されています。
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政治家のありのままの姿を捉えた レイモン・ドゥパルドンの写真展
▲《フランソワ・ミッテラン》1988年
大統領選キャンペーン期間、当時現職大統領のミッテラン氏(左)と、のちに首相となるリオネル・ジョスパン氏
© Raymond Depardon/Magnum Photos
 現在、この博物館では特別展「レイモン・ドゥパルドン 政治家たちの写真」が開催中です。展示されるのは、1977年にピュリッツァー賞を受賞したフランスを代表する写真家ドゥパルドンによる、フランス内外の政治家のポートレート。厳選された83枚の写真からは、政治家のありのままの姿を捉えようというドゥパルドン(Raymond Depardon)の姿勢が伺えます。彼のまなざしは、公人としての生活のなかで、役者たらざるを得ない政治家たちの孤独に向けられているのです。
     
 過去45年間にわたって撮影されたドゥパルドンの写真は、政治家がふと普通の人間の顔を見せる瞬間を捉え、政治家としてのイメージがもつ支配力を利用したメディア・ゲームの一部を暴いたものといえるでしょう。

 政治家たちの姿を間近で捉えた「フォト・ド・コンタクト」と呼ばれる写真を撮影してきたドゥパルドンですが、その黄金時代は、1968年から1982年でした。
▲《ジャック・シラク》1988年
大統領選キャンペーン期間、マティノン・ホテルにて
当時首相のシラク氏(右)と、ボルドー市長ジャック・シャバン=デルマ
© Raymond Depardon/Magnum Photos
政治家のマスコミ担当者が徹底的に規制をするという、第5共和制が始まった頃の忌まわしい風潮が蔓延しているとドゥパルドンが見ている現在では、こうした写真はもはや懐かしいものとなってしまいました。

 この他にもこの博物館では、エリゼ宮(大統領官邸)で開かれた公式晩餐会のテーブルを再現した「エリゼ宮の食卓」など、ユニークな特別展も開催されてきました。

 充実した収蔵品と素晴らしい特別展で、多くの人々をこの地方に惹き付けるジャック・シラク大統領博物館。リムーザン地方の山懐に抱かれたこの博物館は、優れた美術に触れる歓び、そしてフランスの田舎を訪れる楽しみも満喫できるミュゼです。
 
▲博物館のテラスから見たサラン村。
©Didier Boy de la Tour
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シラク大統領博物館
URL
 
http://
www.museepresidentjchirac.fr
所在地
 
Musée du président Jacques Chirac 19800 Sarran
Tel
 
33(0) 5-5-1-77-77
Fax
 
33(0) 5-5-1-77-78
開館時間
 
10:00-12:30、13:30-18:00
休館日
 
12月24・25日
学校のクリスマス休暇期間を除く1月いっぱい
入館料
 
一般:4ユーロ
団体(15名以上):3ユーロ
割引料金(25歳以下・身障者):2.5ユーロ
※6歳以下は無料
サラン基本情報
  フランス中西部リムーザン地方コレーズ県、モネディエール山地の南東端に位置する村。この地方の中心都市リモージュからは100キロ。2600ヘクタールの村域の半分以上を森に覆われた静かな村で、シラク大統領博物館のほか、13世紀に建造された教会やサラン山などが見どころ。同じリムーザン地方には、リモージュのアドリアン・デュブーシェ陶磁博物館や、オービュソンにあるタピスリーの博物館もある。  
コレーズ県観光協会
 

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