• 創業者オベルカンフとジュイのマニュファクチュア
  • 名門マニュファクチュアの歴史が蘇るコレクション
  • トワル・ド・ジュイの豊富なデザインの数々

トワル・ド・ジュイ博物館

ヴェルサイユに程近いパリ近郊の町、ジュイ=アン=ジョザス
(Jouy-en-Josas)。この地の工場で作られた木版・銅版を用いて
生産された生地は、「トワル・ド・ジュイ(Toile de Jouy)」と
呼ばれ、フランスの伝統的なプリント生地として広く知られています。
マリー=アントワネットやナポレオンも訪れた老舗マニュファクチュアの
歴史と名声を振り返り、豊富なコレクションとともに
トワル・ド・ジュイの魅力を伝えるのがこの博物館です。

トワル・ド・ジュイ博物館

ヨーロッパを魅了したインド更紗

▲クリストフ=フィリップ・オベルカンフの肖像画。
© Musée de la Toile de Jouy

17世紀、ヨーロッパ諸国がインドとの交易を盛んに行っていた時代、ヨーロッパ市場に出回ったインド製の更紗は、その軽さと鮮やかな色でヨーロッパの人々を魅了しました。木版を使ったインド更紗の製造技術はヨーロッパ各地でただちに模倣されるようになりますが、フランスはこの産業において他国に大きく遅れをとることとなります。フランス国内の伝統的な織物産業を守るため、1686年にルイ14世(Louis XIV)によってインド更紗の輸入、国内での製造が禁止されたことがその原因でした。70年以上の時を経た1759年、ようやくこの禁止令は解かれますが、その頃フランスでインド更紗の製造ノウハウを知るのは外国人のみという状況でした。

▲ジャン=バティスト・ユエによる1807年当時のジュイ=アン=ジョザスの工場の様子。
© Musée de la Toile de Jouy

そこで多くの外国人技術者がフランスへと呼び寄せられます。パリで版画、印刷業に従事していたドイツ出身のクリストフ=フィリップ・オベルカンフ(Christophe-Philippe Oberkampf)は、こうした外国人技術者のなかで最も重要な役割を果たすことになります。


名声を博した王立マニュファクチュア

▲オベルカンフが当初借りた家「ポン・ド・ピエール」。現在もジュイ=アン=ジョザスに建物が残っており、音楽学校として使用されている。
© Musée de la Toile de Jouy

オベルカンフがジュイ=アン=ジョザスにプリント布地の製造所を開いたのは禁止令の解かれた翌年、1760年のことでした。パリからもヴェルサイユからも近く、更紗の製造に重要な川の水質がよいという理由でジュイ=アン=ジョザスが工場の地として選ばれます。オベルカンフの巧みな経営により、工場は大きな成功を収め、1805年の時点で1300名を超える工場員が働くヨーロッパ最大の規模をもつ工場へと成長しました。ヴェルサイユ近郊という立地からも、革命前まで宮廷と深い関係をもち、1783年にはルイ16世(Louis XVI)より王立マニュファクチュアの称号を得ます。

▲1806年にナポレオンによってレジオン・ドヌールを授けられるオベルカンフ。
© Musée de la Toile de Jouy

また、革命後もナポレオン(Napoléon Ier)からレジオン・ドヌール勲章を授与されるなど、ジュイのプリント布地はこれ以上ない名声を博したのです。ジュイ=アン=ジョザスの初代市長にもなったオベルカンフは、自宅に教皇大使やマリー=アントワネット(Marie-Antoinette)とその子どもたち、ナポレオンの妻ジョゼフィーヌ(Joséphine)やマリー=ルイーズ(Marie-Louise)など、著名な客を迎え入れており、こうした事実からもトワル・ド・ジュイが当時いかに高い評判を得ていたかが分かります。

古城にオープンしたオベルカンフの博物館

▲博物館の建物レグランティヌ城の外観とその庭園。
© Musée de la Toile de Jouy

しかし、工場はオベルカンフの死後衰退し、1843年、83年間に及ぶ歴史に幕を閉じました。当時の工場の建物はほとんどが取り壊されており、町にマニュファクチュア時代の面影はほとんど残っていませんが、ジュイに創立されたこの博物館によって、その歴史が蘇ることとなりました。博物館は1977年にジュイ=アン=ジョザスにあるモンテベロ(Montebello)城に「オベルカンフ博物館」の名のもと開館しました。その後、よりゆったりとした展示スペースをもつレグランティヌ(L'Églantine)城にコレクションを移し、1991年「トワル・ド・ジュイ博物館」の名称で新たに開館し、現在に至ります。レグランティヌ城の庭園には細長い帯状の花壇が並列していくつも設置されており、染色された布地が太陽のもとに広げられた、ジュイ=アン=ジョザスのかつての風景が演出されています。

Update : 2010.3.1
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  • 所在地
    54 rue Charles de Gaulle
    78350 Jouy-en-Josas
  • Tel
    +33 (0) 1 39 56 48 64
  • Fax
    +33 (0) 1 39 56 17 98
  • URL
    http://www.museedelatoiledejouy.fr
  • E-mail
    museetdj@jouy-en-josas.fr
  • 開館時間
    11:00-18:00
  • 休館日
    月曜日、12月25日、1月1日
  • 入館料
    一般(企画展の期間):7ユーロ
    一般(企画展の期間以外):5ユーロ
    割引料金:3ユーロ
    7歳以下:無料
  • アクセス
    RER C線プティ・ジュイ(Petit Jouy)/レ・ロージュ(Les Loges)駅より徒歩。
  • 企画展情報
    2010年の春、博物館ではオベルカンフのマニュファクチュアの創立から250年を記念して、展示内容のリニューアルが行われます。また2010年10月22日から2011年6月20日までの期間、庭園や田園風景がモチーフのトワル・ド・ジュイを植物のデッサンや版画とともに紹介する「野遊び」と題された企画展が行われる予定です。

MMFで出会える トワル・ド・ジュイ博物館

  • MMFにご来館いただきますと、インフォメーション・センターにて、トワル・ド・ジュイ博物館のカタログやパンフレットなどを閲覧いただけます。
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