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工芸技術博物館

発明・技術改良の歩みを伝えるコレクション

▲パスカルが19歳で発明した歯車式計算機「パスカリーヌ」

 博物館には、「科学用用具」「材料・資材」「建設」「通信」「エネルギー」「機械化」「交通・運送」の7部門があり、それぞれの部門が1750年以前、1750〜1850年、1850〜1950年、1950年以降の4つの時代に分けて紹介されています。

 科学用用具のコーナーでは、計算機、計量機、温度計、時計(懐中時計・柱時計・置時計)の進化の歩みを知ることができます。計算機の中には、フランスの数学者ブレーズ・パスカル(Blaise Pascal)が1642年に発明した世界初の歯車式計算機「パスカリーヌ」もあります。財務官であった父の仕事を楽にしようと6桁の計算機を発明した当時、パスカルは弱冠19歳でした。

▲置時計の歴史を振り返るコーナー ▲温度計の進化の歩みを知ることができるコーナー

 材料・資材のコーナーは、鉄、ガラス製品、陶器、機織り機などから構成されています。フランスの発明家ヴォカンソンが1748年に完成させた自動機織り機も展示されています。この機織り機は当時最新技術だったものの、今までの人の手作業が機械に置き換えられることで、失業者を増やすことが心配され、注目されませんでした。実際に改良が積極的に進められたのは、19世紀初頭のことでした。このように、せっかく早期に発明されても、その時代のニーズや人々の考え方に適応していなければ、注目されるのがその50年後、100年後となる発明品は数多くありました。

▲発明家ヴォカンソンが1748年に完成させた自動機織り機   ▲博物館の中にある発明家ヴォカンソンの像
▲バルトルディ作《自由の女神》像の頭部の建設風景を再現した模型

 建設のコーナーでは、教会、螺旋階段、灯台、ダム、記念碑といった建築物の構造の歴史を振り返っています。フランスのバルトルディ(Frédéric-Auguste Bartholdi)作《自由の女神》像は1776年のアメリカ合衆国の独立宣言から100周年を記念して、フランスから贈呈されましたが、実際に完成したのは1886年のことでした。《自由の女神》像はパリのモンソー公園近くで建設され、作業の様子は有料見学というかたちで一般公開されていました。

▲マリノニが1864年に完成させた輪転印刷機「ラ・マリノニ」

 通信のコーナーでは、電話、カメラ、レコーダー、タイプライター、印刷機などの機械を紹介しています。イタリア系フランス人マリノニ(Hippolyte Marinoni)が1864年に完成させた輪転印刷機「ラ・マリノニ」誕生のおかげで、パリの新聞「ル・プティ・ジュルナル」は発行部数を100万部まで伸ばし、当時の世界最多発行部数の新聞となりました。

▲オベリスクを運んだ艦船に導入された蒸気システム

 エネルギーのコーナーには、蒸気を活用した機械、大型の窯の模型などが展示されています。1829年にイギリスで新しい蒸気システムが発明され、そのシステムを導入した蒸気式コルベット艦「フェニックス」は1833年、エジプトのアブキール湾からフランスのル・アーヴル湾まで、現在コンコルド広場にあるオベリスクを運びました。

▲1930年代のアメリカのシンガー社の足踏み式ミシン

 機械化のコーナーでは、機械を作る機械や日常生活で使う道具の機械化の歩みを振り返ることができます。最初の実用的なミシンは1830年にフランスで発明され、主にアメリカで技術改良が進められました。さまざまな機械の中でも、一般家庭に普及した最初の機械だったと考えられています。当時洋服は手縫いで、家庭で作るもの、もしくは仕立屋にオーダーするものだったため、ミシンの登場は裁縫時間の短縮に大いに役立ちました。第2次世界大戦後、既製服という概念が生まれてからは、ミシンは工場やデザイナーの工房で活躍しました。

▲1770年、大砲の牽引用に発明された「キュニョー砲車」

 交通・運送のコーナーには、航海船や飛行機の模型、蒸気機関車、自動車、自転車が展示されています。フランスの軍人で、技師でもあったキュニョー(Nicolas-Joseph Cugnot)は、1770年、大砲の牽引用に3輪蒸気自動車を発明します。この「キュニョー砲車」は、馬に荷を引かせる代わりに蒸気を使った世界初の自動車です。

▲19世紀中ごろに発表された「フーコーの振り子」

 礼拝堂には、19世紀中ごろにフランスの物理学者フーコー(Léon Foucault)が地球の自転を実験で証明した「フーコーの振り子」(5区のパンテオンにも同じものが配置)や、自動車、飛行機などが展示されています。


 フランスが誇る発明品の数々を通じて、この文化大国が歩んできた産業技術の歴史を辿ってみませんか。

Update :2010.9.1 文・写真 : 依田千穂(Chiho Yoda)
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工芸技術博物館

  • 所在地
    60 rue Réaumur 75003 Paris
  • Tel
    +33(0)1 53 01 82 00
  • Fax
    +33(0)1 53 01 82 01
  • E-mail
    musee@cnam.fr
  • URL
    www.arts-et-metiers.net
  • 開館時間
    10 :00-18 :00
    *但し、木曜は10:00-21 :30
  • 休館日
    月曜日、5月1日、12月25日
  • 入館料
    <常設展>
    一般:6.5ユーロ
    割引料金:4.5ユーロ
    25歳以下:無料
    <企画展>
    一般:5.5ユーロ
    割引料金:3.5ユーロ
    4歳以下:無料
    <常設展・企画展の共通チケット>
    一般:7.5ユーロ
    割引料金:5.5ユーロ
  • アクセス
    地下鉄3番線・11番線アール・エ・メティエ(Arts et Métiers)駅より徒歩。

企画展:MUSEOGAMES 2010年6月22日〜11月7日

  • テレビゲームに関する企画展。家庭用ゲーム機の歴史を紹介するコーナー、歴代のゲーム機の体験コーナー、ゲームクリエーターなどゲーム業界で活躍する人たちのインタビュー映像を視聴できるコーナー、歴代のゲームセンターの機械の展示コーナーという4つのテーマに沿って、ゲームの歴史を学ぶことができます。

MMFで出会える工芸技術博物館

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