リヨン現代美術 ビエンナーレ 2007〜まだ名前のないこの10年の歴史〜 南仏コート・ダジュールのミュゼレポート
 
2年に一度のコンテンポラリー・アートの祭典、リヨンのビエンナーレが今年の9月19日から来年1月6日まで開催されています。1991年から始まったビエンナーレは今年で9回目。テーマは「まだ名付けられていないこの10年の歴史」で、10年間のコンテンポラリー・アートの総括を目指す試みです。今年も砂糖工場跡のシュークリエールを中心に、リヨン現代美術館、隣町のヴィルールバンの現代美術インスティチュート、ブルキアン財団の4カ所で展示が行われています。
▲参加アーティストたちの作品が並ぶメイン会場のシュークリエール。
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■ シュークリエール ■ 現代美術インスティチュート ■ リヨン現代美術館 ■ ブルキアン財団
“この10年間で誰がいちばんすごい?”
 ビエンナーレ創設当時からアート・ディレクターを務めるチェリー・ラスパイユ(Thierry Raspail)にとって、今回は2003年に彼が考えた「現代美術総括のトリロジー」の最終章にあたります。彼が今回選んだキュレーターはパリで活動するステファニー・モワドン(Stéphanie Moisdon)とロンドンを拠点にしているハンス・ウルリッヒ・オブリスト(Hans Ulrichi Obrist)の2人です。彼らはさらに49人のキュレーターや評論家を募り、「この10年間を代表すると思われるアーティスト」を選ばせました。その数111人。この他にモワドンとオブリストが直接選んだアーティストが14人います。
 例年に比べると参加アーティストが多いせいか、小品が多く、感覚的に圧倒されるような大規模なインスタレーションが少なかったのは残念でした。それでもカタログ的に現代美術の「今」を知るには有意義な内容と言えるかもしれません。
 
多彩な展示が並ぶシュークリエール
 メイン会場のシュークリエールにはびっしりと展示作品が並んでいます。トーマス・サラセノ(Tomas Saraceno)の水中生物のような作品群、チャールズ・アヴェリー(Charles Avery)のカラフルな内部の小部屋、クリスチャン・ホルスタッド(Christian Holstad)の派手なインスタレーションなどがあります。また防空壕の中でブラスバンドが楽器を吹き鳴らしているジェニファー・アロラとギレルモ・カルザディア(Jennifer Allora & Guillermo Calzdilla)の《クラモール》は決して楽しいシチュエーションではないにしろ、どこかユーモラスな味わいがあり、オマール・アリ・カズマ(Omar Ali Kazma)の陶器製造、時計修理、脳外科手術の映像を同時に3つ流すという試みも、相互に関連性を感じて見入ってしまうものでした。
 
▲トーマス・サラセノ《フライング・ガーデン/エアポート・/60SW》/ Tomas Saraceno
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▲チャールズ・アヴェリー《永遠の小部屋》/ Charles Avery
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▲クリスチャン・ホルスタッド インスタレーション/ Christian Holstad
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▲ジェニファー・アロラとギレルモ・カルザディア《クラモール》/Jennifer Allora & Guillermo Calzadilla
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映像作品が多い現代美術インスティチュート
 入り口を入ったらすぐにアメリカのディヴ・フルフィッシュ・バイレイ(Dave Hullfish Bailey)の作品を集めた部屋があり、中央部の通路ではカラフルなクレール・フォンテーヌ(Claire Fontaine)の作品が並んでいます。その他には多くの映像作品が発表されています。壁紙に女の子の姿を描き出すマイ=チュウ・ペレ(Mai-Thu Perret)、核のような物体を35mmで映し出すシモン・スターリング(Simon Starling)などの作品があります。
 
▲現代美術インスティチュート
▲ディヴ・フルフィッシュ・バイレイ インスタレーション/Dave Hullfish Bailey
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▲クレール・フォンテーヌ《拒絶されたものたち》、《無題(アイデンティティー、主権、伝統)V.II》、《無題(アイデンティティー、主権、伝統V.III》/Claire Fontaine
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▲シモン・スターリング《ワーク・イン・プログレス》/Simon Starling
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■ シュークリエール ■ 現代美術インスティチュート ■ リヨン現代美術館 ■ ブルキアン財団
 
田中久美子(Kumiko TANAKA/写真・文)
 
リヨン現代美術ビエンナーレ 2007
所在地
 
シュークリエール<Sucrière>
  Port Rambaud, quai Rambaud, 69002 Lyon
リヨン現代美術館<Musée d'Art Contemporain de Lyon>
  Cité Internationale 81, quai Charles de Gaulle, 69006 Lyon
ヴィルールバン現代美術インスティチュート<Institut d'Art Contemporain de Villeurbanne>
  11, rue Docteur Dolard, 69100 Villeurbanne
ブルキアン財団<Fondation Bullukian>
  26 Place Bellecour - 69002 Lyon
URL
 
http://www.biennale-de-lyon.org/
会期
 
2007.9.19-2008.1.6
開館時間
 
12:00-19:00(金曜は12:00-22:00)
ただし、「リヨン光の祭典(Fête des Lumières)」の期間(2007.12.6-12.9)のみ午前10 時より開催。
休館日
 
月曜日、12月25日、1月1日
入館料
 
<個別入場券(L'entrée individuelle)>
一般:10ユーロ
割引料金(10名以上の団体、19-26歳、障害者):7ユーロ
12-18歳:2ユーロ
12歳未満:無料
夜間料金:5ユーロ(金曜の19時以降、ブルキアン財団を除く会場で有効)
個別入場券は、4会場各1回の入場が可能。会期中有効。
<パスポート(Le pass)>
1名:17ユーロ
2名:25ユーロ
19-26歳:12ユーロ
パスポートは、会期中、4会場に何度でも入場可能。
MMFで出会える リヨン・ビエンナーレ
MMFwebサイトでは、2005年に開催された「第8回リヨン現代美術ビエンナーレ」レポートをご覧いただけます。
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