銀座界隈で出会えるアート
銀座界隈アートスポット巡り vol.2

メゾン・デ・ミュゼ・ド・フランス(MMF)のある銀座界隈には 企業が運営する美術館やギャラリーなどが、数多く点在しています。銀座のMMFにお越しの際、併せて訪問いただきたいこうしたアートスポットをご紹介してまいります。

第2回 シャネル・ネクサス・ホール 伝説のフォトスタジオ「スタジオ アルクール」が記録したフレンチシネマのスターたち

今回、MMFスタッフが訪れたのは、シャネル銀座ビルディング4階にあるシャネル・ネクサス・ホール(CHANEL NEXUS HALL)で7月18日まで開催中の「スタジオ アルクール パリとフレンチシネマ−77年の神話と軌跡」。
往年の銀幕の名優や現在のスターのポートレイト62点が一堂に会したその空間は、フランス文化の香りとモノクロームの美しさに溢れていました。

 

シャネル・ネクサス・ホール

マップシャネル・ネクサス・ホールは、シャネル銀座ビルディングの4階にあるコンサートや展覧会が行われるイベント・スペース
  • 所在地
    東京都中央区銀座3-5-3
    シャネル銀座ビルディング4階
  • Tel
    シャネル・ネクサス・ホール
    事務局 03-3779-4001
  • 観覧料
    無料
  • 「スタジオ アルクール パリとフレンチシネマ―
    77年の神話と軌跡」

    2011年6月25日(土)〜7月18日(月) 12:00〜20:00
マップ
  • アクセス
    東京メトロ銀座線「銀座駅」A13出口から徒歩1分。東京メトロ有楽町線「銀座1丁目」5番出口より徒歩1分。
 

▲シンプルかつモダンな雰囲気のシャネル・ネクサス・ホール

ココ シャネルの精神を受け継ぐ芸術支援の活動

「受け取るよりは、与えるほうが、はるかにうれしい」

 こんな言葉を残したシャネルの創始者ココ シャネルは、芸術の擁護のために匿名の寄付をしたり、才能のある若い芸術家を支援したりと、今でいうメセナ活動を積極的に展開した女性でもありました。


▲モノクロームで統一されたスペースに、スターのポートレイトが美しく浮かび上がる

▲スタジオ アルクール創世記の歴史を感じさせる写真。上段右からふたつ目は、ジャン・コクトーのポートレイト

 こうしたココ シャネルの精神を受け継ぎ、シャネル・ネクサス・ホールでは、若手の音楽家によるコンサートや、すぐれたアーティストを紹介する展覧会を開催しています。今回はどんな“才能”との出会いが待っているのでしょうか――。そんな思いを抱きながら、モダンな雰囲気のシャネル・ネクサス・ホールに向かいました。


 ホールに一歩足を踏み入れると、光と影の中から浮かび上がる往年のスターのポートレイトが出迎えてくれました。大きな瞳から挑戦的な視線を投げかける、小悪魔的な魅力いっぱいのブリジッド・バルドー、葉巻をくゆらすダンディな表情のジャン・レノ。欧米における「美男」の象徴で、“フレンチ・ラバー”として知られるアラン・ドロンのポートレイトは、25歳当時のものと、2011年に撮影されたばかりの貴重な76歳の姿の2点が展示されています。こうした写真はすべて1934年のパリに誕生した伝説的なフォトスタジオ、「スタジオ アルクール」で撮影されたものです。

▲ブリジッド・バルドー

▲ジャン・レノ

▲アラン・ドロン


「フランスにおいては、スタジオ アルクールでポートレイトを撮影しないうちは、スターではない」

 フランスの思想家ロラン・バルトはその著書の中でスタジオ アルクールをこう評しました。この絶大なる人気の秘密はなんだったのでしょうか?本展を案内してくださったご担当者に聞いてみました。

“光の中に彫刻する”スタジオ アルクールのポートレイトの魅力

▲展覧会場には、「スタジオ アルクール パリ」を再現した一角も

 「スタジオ アルクールが設立されたのは、白黒映画の全盛期の時代です。そしてその白黒映画に使われた照明技術を応用して画期的な写真を世に送り出したのが、このスタジオ創設に尽力した進歩的な女性、コゼット・アルクールでした。彼女は伝統的な油彩肖像画からインスピレーションを受け、光と影を駆使したアルクール・スタイルを確立していったのです。そしてそのポートレイトは、美しいだけでなく、被写体の内面までも浮き彫りにすることに成功しました」

▲バストアップのポートレイトが多い中、全身像で撮影された歌姫エディット・ピアフ。その小さな身体から振り絞るように歌う彼女独特の世界観を伝えているようだ


 なるほど、ポートレイトの1点1点をゆっくり見ていくと、写真には再現性だけでない大きな魅力が潜んでいることに気づかされます。写真とは、その人物の内面を覗き込むような、さらには人物が発する“オーラ”までをも映し出すことが可能な「芸術」であることが手にとるように分かるのです。


「今回の企画は、ココ シャネルとほぼ同時代に生きたアルクールという女性にも興味を持っていただきたいと思っています。スタジオ アルクールは当時創設された写真館のうち、現在も営業を続けているパリで唯一のスタジオです。こうした長い歴史を刻んできた背景には、伝統を守りながらも、時代にあった新しい技術や要望に応えていく柔軟性も要求されます。スタジオ アルクールではスターだけでなく、もちろん一般の方が撮影されることも可能で、現代的なサービスもしているんですよ」

 よき伝統を守りながらも、それに固執することなく、新しい潮流を見逃さない勇気――。そこには、ココ シャネルと、コゼット・アルクールという二人の女性に共通する凛とした生き方、そして上質な美学を感じることができました。フレンチシネマのファンだけでなくとも楽しめる、贅沢な展覧会です。

▲左から順に、イヴ・モンタン、若き日のアラン・ドロン、ブリジッド・バルドー、ミシェル・モルガンなど、フレンチシネマを代表する銀幕のスターたちのポートレイトが並ぶ

▲右から順にルイーズ・ブルゴワン、ジュリー・ガイエ、ヴィルジニー・ルドワイヤンなど、新しい時代のミューズたちのポートレイトも

▲スタジオ アルクールの歴史を、ゆかりの人々が語る映像も上映されている

担当者からのメッセージ

 時間をかけて見ていただきたいと思います。スターの内面をも表現しているポートレイトを前にすると、想像力がどんどん膨らんでいくことに驚かれることでしょう。また今回の展示では、映像を使ってスタジオ アルクールの歴史もお伝えしています。ぜひ写真技術が誕生したフランスという国の文化が持つ空気を、トータルで感じていただければと思っています。

 
 

Update :2011.7.8

ページトップへ
 
backnumber