「ジョアン・ミロ 翔び立つ鳥のように」展コミッショナー マーグ財団主任学芸員    アネット・ピウ氏
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南フランス、サン・ポール・ド・ヴァンスのマーグ財団美術館が所蔵する、20世紀の巨匠ジョアン・ミロ(1893-1983年)の円熟期(1960-70年代)に制作された作品が公開される本展覧会。晩年を迎えてなお、たゆみない制作意欲で詩情あふれる作品を生み出していった、ミロの創造力に触れられる展覧会です。
マーグ財団 主任学芸員 アネット・ピウ氏 マーグ財団美術館の主任学芸員であり運営管理担当官で、軽井沢メルシャン美術館で開催される展覧会「ジョアン・ミロ、翔び立つ鳥のように」の責任者アネット・ピウ氏とのインタビューを通して見所についてお伺いしました。

1964年、ニース近郊のサン=ポール・ド・ヴァンスに創設されたマルグリットとエメ・マーグ財団は、20世紀の絵画、彫刻、デッサン及びグラフィック作品のヨーロッパで最も重要なコレクションの一つを所有しています。

MMF:美術館の世界におけるマーグ財団の特殊性について教えて下さい。

アネット・ピウ氏(以下AP):最大の特殊性は完全な民営の美術館だということです。入場料、書店での販売、そしてフランス国内、また海外での展覧会による、収入で運営されています。41年前の創設以来、この民営性が美術館の自立と独立を可能にしています。
MMF:ミロとマーグ財団の関係はどのようなものですか?

AP:20世紀の最も偉大な美術商の一人であったエメ・マーグが、ジョアン・ミロと出会ったのは1948年でした。彼らは親友になると同時に同志にもなりました。
エメ・マーグが財団創設の構想を抱いたとき、ジョアン・ミロは、パルマにあるミロのアトリエを設計した友人の建築家ジョゼップ・ルイス・セルトをマーグに紹介します。このようにして始まったサン・ポールでの財団の冒険のために、ジョアン・ミロは彫刻と巨大な陶芸作品で構成する迷宮のような庭園を造りました。
マーグ財団のコレクションには、ジョアン・ミロの寛大な寄贈による275点の類稀な作品、1000点以上の版画及び挿画入りが収められた大型本が収蔵されています。

MMF:メルシャン美術館のミロ展のコミッショナーとして作品の選択と展示をどのように行ったのですか?

AP:彫刻の展示は、空間での配置、つまり、その場に応じた展示を必要とします。私は、日本で作品を鑑賞される皆様が、ミロの作品の詩情と遊戯性を併せ持つ面と、作品とのより自然な関係を提示できるように努力しました。それが成功していると良いのですが。
軽井沢で展示される数点の作品は重要なものです。例えば2001年9月11日の世界貿易センター・ビルの4階部分の破壊により、いまや世界でも2点しか存在しない記念碑的なタピスリーや、ミロが敬愛していた日本の書道に着想を得た絹の作品「巻物」は特に重要なものです。

MMF:現在、サン=ポールの美術館ではどのような展覧会が開催されていますか?

AP:現在開催されている「Les ateliers de la modernit-近代性のアトリエ」では、ミロはもちろん、ジャコメッティ、ブラックまたシャガールら20人のアーティストの版画作品による当館所蔵の非常に重要なコレクションを今回初めて展示しています。
この展覧会は11月まで開催していますので、この機会に、日本の多くの皆さまがマーグ財団を訪れ、ミロのモニュメンタルな作品も楽しんでいただけるとうれしく思います。
メルシャン軽井沢美術館開館 10周年記念展
会期:
2005年7月13日(水)〜
11月11日(金)

会場:
長野県北佐久郡御代田町馬瀬1799-1
メルシャン軽井沢美術館
TEL 0267-32-0288

開館時間:
9:30-17:00
(但し、8月1日〜5日、7日〜11日、14日は19:00まで/8月6日、12日、13日は16:30まで/9月10日は16:00まで)

休館日:
火曜日(ただし7・8月は会期中無休)

公式ホームページ
http://www.mercian.co.jp/
musee/
Plus d’info

■ジョアン・ミロ: 1960年代半ばから70年代にかけての作品

1893年にバルセロナ(スペイン、カタルーニャ地方)で生まれたジョアン・ミロは、20世紀を代表する作家の一人です。一般的に、ミロの作品は子供のように無邪気で明るいと言われることが多いのですが、絵具が激しくほとばしり、荒々しく飛び散る作品も数多くあります。
ミロは、自らを「悲観的人間」と評し、スペイン中央政府によるカタルーニャ地方の弾圧の歴史、1936年から1975年まで続いたフランコ総統による独裁政治、そして第二次世界大戦後も世界中で繰り返される戦争に怒りを持っていました。また、何よりもカタルーニャ人であることに誇りを持ち、自由であることを強く求めました。それは、1970年代の作品に強く表われています。また一方で、ミロは、世界の、そして宇宙の根源についても考え続けました。それらは、本展でも見られる「太陽」、「月」などのモチーフとして表現され、生涯描き続けるテーマとなりました。

■ミロとマーグ財団
本展覧会は、マーグ財団が所蔵するジョアン・ミロのコレクションで構成されます。マーグ財団は、現代美術振興のためにマーグ夫妻によって1964年設立され、昨年、40周年を迎えました。同時代の作家に関心を持ち、彼らの支援に情熱を注いだ夫妻は、ボナールをはじめ、ブラック、ジャコメッティ、シャガール、マティスなど多くの芸術家と親交が深く、マーグ財団には彼らの作品が数多く所蔵されています。同財団では、コレクションの公開にとどまらず、音楽、舞台芸術などジャンルを越えて様々な試みが行われ、新しい芸術を生み出す場として、その活動は世界中に知られています。

インタビューでもあるように、同財団の設立者であるマーグ夫妻とミロの関係は、1948年、財団の前身であるマーグ画廊でミロの個展が行われた時に始まります。その後、彼らが画商と作家以上の深い友情で結ばれていたことは、後にマーグ財団設立に際して、ミロの作品のために展示室が設けられ、また、財団の緑豊かな空間に、ミロによって「迷宮」と呼ばれる彫刻庭園が制作されたことからも察することができるでしょう。

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