GINZA-ART LINK [ 銀座界隈で出会えるアート ]
銀座界隈アートスポット巡り vol.13

メゾン・デ・ミュゼ・ド・フランス(MMF)のある銀座界隈には 企業が運営する美術館やギャラリーなどが、数多く点在しています。銀座のMMFにお越しの際、併せて訪問いただきたい、こうしたアートスポットをご紹介してまいります。

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第13回 三井記念美術館 ゆくとしくるとし―茶道具と円山派の絵画―

銀座MMFから中央通りを北へ──。今回は、クリスマスに華やぐ通り沿いの散策を楽しみつつ、日本橋まで向かいました。お目当ては、三井記念美術館。江戸の昔から日本橋の地にゆかりがあり、この季節にぴったりの展覧会「ゆくとしくるとし―茶道具と円山派の絵画―」を開催中の美術館です。

 

三井記念美術館 MITSUI MEMORIAL MUSEUM

  • 所在地
    東京都中央区日本橋室町
    二丁目1番1号 三井本館7階
  • Tel
    03-5777-8600(ハローダイヤル)
  • 開設年
    2005年(1985年開設の
    三井文庫別館が前身)
  • 設立趣旨(ミッション)
    江戸時代以来、三井家300年の歴史の中で収集され伝えられてきた文化財を末永く伝えるとともに、それを中心に日本および東洋の美術、文化に関する展示を行い、現代および未来の人々と社会に心の豊かさと潤いを与え、美的感性の育成に努める。
  • 開催中の展覧会
    「ゆくとしくるとし―茶道具と円山派の絵画―」
    2012年12月8日(土)~2013年1月26日(土)
  • 入場料
    一般:1,000円/大学・高校生:500円/中学生以下:無料
マップ
  • 休館日
    月曜日(月曜日が祝休日の場合は、翌平日)、
    展示替期間、年末年始、臨時休館日
    ※上記展覧会会期中の休館日は
      12月25日~2013年1月3日、1月15日、1月21日
  • アクセス
    無料巡回バス「メトロリンク」、「三井記念美術館」より徒歩1分。東京メトロ銀座線「三越前」駅A7出口より徒歩1分。東京メトロ半蔵門線「三越前」駅より徒歩3分。JR「東京」駅日本橋口より徒歩7分。JR「神田」駅より徒歩6分。JR総武快速線「新日本橋」駅より徒歩4分。
  • 開館時間
    10:00-17:00(入館は16:30まで)
 

三井家代々の伝来品をそのゆかりの地で楽しむ

▲風格あるたたずまいの三井本館

 日本銀行や三越本店など、商業の町として発展してきた日本橋ならではの建物が立ち並ぶ一画。趣ある建築が軒を並べる中で、とりわけ重厚なたたずまいを見せているのが、三井記念美術館のある三井本館です。1929年に竣工し、昭和初期の日本を代表する洋風建築として国の重要文化財にも指定されているこの名建築を活かし、2005年10月、新たな美術館を誕生させたのは、日本橋の地にゆかりの深い三井グループでした。

▲洋風建築の空間に、日本および東洋の美術品が並ぶ

 三井家の歴史は、江戸時代、延宝元年(1673)年、江戸本町一丁目(現在の日本銀行あたり)に呉服店「越後屋」(現在の三越百貨店の前身)を開いたことに始まります。「現銀掛け値なし」をスローガンに、正札販売を他にさきがけて実現して庶民の人気を集めたこの越後屋のほか、両替商としても大きな成功を収めた三井家は、その一方で、茶道具を主とする名物道具、美術工芸品を積極的に収集するようになっていきました。
 現在、三井記念美術館に所蔵されている三井家代々の伝来品は約4,000点。東京には「都市型」の美術館が点在していますが、300年に及ぶ歴史の中で受け継がれてきた伝来品を、そのゆかりの地で堪能できるのは、三井記念美術館ならではの魅力といえるでしょう。


ファン待望の国宝が公開される年末年始の企画展

▲美術館の玄関がある、日本橋三井タワー入り口

 三井記念美術館では、年に5回程度、館蔵品展や特別展が開催されていますが、三井家伝来の“名品中の名品”を楽しみたい方には、毎年、暮れからお正月を挟むこの時期に開催される展覧会がおすすめです。今回は「ゆくとしくるとし―茶道具と円山派の絵画―」と題し、歳暮と初春をテーマに三井家の茶道具の名品と円山派の絵画を展示する展覧会となっています。

 美術館の入り口は、三井本館に隣接する超高層の「日本橋三井タワー」アトリウムにあります。エレベーターを降りて会場へ足を踏み入れると、そこは昭和初期の洋風建築らしい重厚かつモダンな雰囲気。その中で、ひとつひとつの展示品がやわらかい光を受けて浮かび上がっていました。


▲国宝茶室「如庵」の室内を再現した展示ケース

 今回の“目玉”のひとつ、国宝《志野茶碗 銘 卯花墻(うのはながき)》は、三井家ゆかりの茶室「如庵(じょあん)」を再現した展示ケースに置かれていました。文様に重なる白い釉を卯の花に見立てたこの茶碗はファンも多く、「この時期になると卯花墻を見たくなる」と展示期間の問い合わせの電話もあるほどとか。確かに、ほの暗い茶室にひとつ置かれた茶碗は、茶の湯には馴染みの薄い者でも思わず見入ってしまうほどの、えも言われぬ存在感をたたえていました。

 そのほか、冬の夜長を楽しむ茶の湯の会「夜咄しの茶事」の茶道具や、高麗茶碗の名品などを数多く揃えた展覧会ですが、毎年恒例、こちらも多くのファンが待ち望んでいるのは、円山応挙筆の国宝《雪松図屏風》でしょう(1/4~1/26展示)。

▲国宝《雪松図屏風》円山応挙筆 江戸時代・18世紀(1/4~1/26展示)

 江戸時代から受け継がれてきた名品を見て新春を寿ぐ。そんな風情ある時間を過ごしに、三井記念美術館を訪ねてみませんか。

 ※常設展はありません。

ギャラリー担当者からのメッセージ

雪原のなかに松が三本。それが墨と金と紙の白さであらわされています。ただそれだけなのに、新春のきらめく光とピリッとした空気、清々しい気分を感じさせる絵です。この屏風は、お正月の日本橋の吉例として、三井記念美術館でもっとも広い展示室の正面を飾ります。
円山応挙は江戸時代18世紀後半の京都で活躍した絵師で、写生を基礎においた画風をうちたてました。それは、近代の日本画につながる新しい感覚なのです。 三井記念美術館 学芸員 樋口一貴

 
 

Update : 2013.1.7

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