Ginza Art link - 銀座界隈アートスポット巡り

GINZA-ART LINK[ 銀座界隈で出会えるアート ]VOL.2

アートスポット巡り銀座界隈 GINZA-ART LINKVOL.26

メゾン・デ・ミュゼ・デュ・モンド(MMM)のある銀座界隈には企業が運営する
美術館やギャラリーなどが、数多く点在しています。銀座のMMMにお越しの際、
併せて訪問いただきたい、こうしたアートスポットを中心にご紹介してまいります。

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第26回 はせがわ銀座本店/ギャラリー 祈りのこころを伝える癒しのスペース

今回訪れたのは、銀座1丁目にある「はせがわ銀座本店/ギャラリー」。仏壇・仏具の販売、製造メーカーで知られる株式会社はせがわが運営するギャラリーでは、この季節にぴったりな祈りのこころを現代に伝えるための展示が行われていました。

はせがわ銀座本店/ギャラリー

所在地
〒104-0061東京都中央区
銀座1-7-6 銀座河合ビル
Tel
0120-587-676
開設年
2002年
運営コンセプト
「喧騒のなかにあっても、こころの静寂を得られ癒される場を」と開設。さまざまな仏壇を通し、生命のつながりや祈りの大切さを伝えている。
URL
http://www.hasegawa.jp/corporate/shop/ginza/
入場料
無料
※6階のギャラリーは常時開放していないため、ご入場の際は店舗1階にて申し出てください。
開館時間
10:30〜18:30
休館日
不定休
アクセスマップ
アクセス
JR各線「有楽町」駅国際フォーラム口より徒歩5分
東京メトロ銀座線「銀座」「京橋」駅より徒歩3分
東京メトロ有楽町線「銀座一丁目」駅7番出口よりすぐ
主催
株式会社はせがわ

「家庭にも祈りの場を」仏壇・仏具を紹介するギャラリー

▲2002年、銀座1丁目の中央通りに面して建てられた「はせがわ銀座本店/ギャラリー」

 「お手てのしわとしわをあわせてしあわせ」。
 仏壇売り上げNo.1の実績を誇る株式会社はせがわが誕生したのは、1929(昭和4)年のこと。長谷川才蔵(はせがわ・さいぞう)氏が福岡県直方市古町に「長谷川仏具店」を創業したことに始まります。以来、仏壇と仏具の製造・販売だけでなく、墓石・納骨堂の販売、国宝・重要文化財修復事業など、グループ会社でさまざまな事業を展開しています。


▲ギャラリー1階にある「平成黄金の茶室」は、完成に至るまで数年を要したという

▲籔内佐斗司さんの《しあわせ観音》が出迎えてくれる

 2002(平成14)年、「慌ただしく過ぎてゆく大都会の中心に、生命のつながりや祈りの大切さを感じさせてくれる空間があったら」と、銀座の中心地に「はせがわ銀座本店/ギャラリー」を開設。そこには、「亡き方の供養だけでなく、生きている人々がこころ穏やかに生活できるようなお手伝いをしたい」という、はせがわならではの思いがありました。銀座ギャラリーの1、2、6階のフロアでは、「祈りのこころ」をテーマに、人間国宝の作品や明治時代の豪華絢爛な仏壇など、美術品さながらの仏壇・仏具を展示しています。

日本の伝統工芸の粋仏壇の魅力を伝える展示

 癒される御香が漂う店内に入ると、右脇には彫刻家、東京藝術大学大学院文化財保存学主任教授で、文化財修復の指導や仏像修復を多く手がける籔内佐斗司(やぶうち・さとし)さんによる《しあわせ観音》が優しい微笑みで出迎えてくれます。そして、ギャラリー正面には遠州茶道宗家13世家元が監修したという「平成黄金の茶室」が黄金の輝きを放っていました。金箔を約8,000枚用いて製造されたというだけに、見入ってしまうほどの圧倒的な存在感です。

▲森内さんは、「塗りの工程についても省略せず、本式に近づけて行います」とはせがわの特徴を語る

 入り口横の階段を上がって2階フロアへ。日本を代表する作家たちによる仏壇をはじめ、現代人の生活にも合う家具調のものなど、バラエティ豊かな仏壇・仏具の提案がされています。「お仏壇を学べば学ぶほど、漆芸の技法や螺鈿の技法など、日本の伝統工芸につながっていきます。たとえば、お仏壇の引き戸ひとつとっても、見ようによってはアートなんですよ」と語るのは、副店長の森内政行(もりうち・まさゆき)さん。「お仏壇は技術的にも優れていますが、本来は日本人が朝晩お参りをしたり、子供を躾けたり、頂き物を差し上げたりする、先祖がいらっしゃる場所です。ですから、通常のアートとは意味合いが少し異なり、常に仏様に見られているんだという“こころ”の部分がそこにはある。それがお仏壇の面白いところです」と仏壇の魅力を語ってくださいました。

▲人間国宝の故・江里佐代子さんによる作品

 続いてエレベーターで6階のギャラリーへ向かうと、静寂な空間が広がっていました。展示室には、若くして人間国宝となった江里佐代子(えり・さよこ)さんによる、重要無形文化財の「截金(きりかね)」を使った作品も展示されています。「截金」とは、金箔などを細く直線状に切り、筆の毛先を使って1本1本文様を表現していく伝統技法のこと。「この技術を後世に伝えたい」という江里さんの思いでつくられた仏像や鞠は、息を呑むほど美しいものでした。

▲明治時代の豪華な仏壇。金箔で覆われた扉の部分に、美しい木目を見ることができる

 なかでも圧巻だったのは、ギャラリー中央に展示されていた明治から大正期に10年かけてつくられた荘厳な仏壇です。「たとえば、扉の部分を見てください。美しい渦が出ているでしょう。こうした渦を玉杢(たまもく)と呼ぶのですが、このような美しいものは何千本に1本という貴重なもの。使われている素材はもちろん、わが国の工芸技術が世界の頂点にあることを示すようなお仏壇です」。実は、この仏壇はお焚き上げで供養される直前だったところを、はせがわの製造メンバーによって救われたと森内さんはいいます。この話を伺い、文化財ともいえる作品が残されたことに、何か見えない不思議な力を感じました。


▲「お仏壇のはせがわ賞」の第2回受賞者の吉水快聞さん。「想定復元ですので、オリジナル通りにつくるのが基本。研究しながら復元を行うのは非常に困難を極めました」(吉水さん)

▲屋久杉を使ってつくられたお仏壇。年を追うごとに味わい深い色合いが出てくるという

 また、はせがわでは2007年より、東京藝術大学大学院 美術研究科文化財保存学保存修復専攻修士課程の卒業最優秀作品に「お仏壇のはせがわ賞」を授与し、文化財保存を担う技術者の育成に貢献しています。ギャラリーでも受賞作を展示しており、取材時には、第2回受賞者、吉水快聞(よしみず・かいもん)さんの快慶作による想定復元模刻が飾られていました。

「ご家庭に祈りの場所を持ってもらいたいというのが、私たちの願いです」と森内さん。ぜひ、ギャラリーに足を運び、仏壇に秘められた日本人のこころと日本の伝統工芸の粋を感じ取ってください。

ギャラリー担当者からのメッセージ - Message de Galerie

日本人が積み重ねてきた技術はもちろん、なぜ私たちがお寺に観光で行くのか、なぜお仏壇に向かうのかといった精神的な部分も含め、さまざまなことを思い起こさせてくれるきっかけになりうる場所だと思っています。このギャラリーを訪れることで、もう一度自分のお仏壇をゆっくり見てみようといってくださる方もいらっしゃいます。一軒でも多く、ご家庭にお参りをする場所を持ってもらいたいというのが創業時からの願いです。ぜひお気軽にお立ち寄りいただければ嬉しいです。
はせがわ銀座本店/ギャラリー  副店長 森内政行

Update : 2015.9.1ページトップへ

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