
ダリをはじめ、ユニークな画家たちが仕掛けた
“イメージの罠”をひもとく
2012年11月21日からパリのポンピドー・センターでは、大規模なダリ展が開催されます。シュルレアリスムの代表的な画家であるダリは、その奇想に富んだ画風から日本でも人気のある画家のひとり。この秋、パリを訪れる多くの日本人の旅行者にとっても、楽しみな展覧会となることでしょう。そこで今月は、2009年にポンピドー・センターで開催されたダリを取り上げたユニークな展覧会「隠されたイメージ アルチンボルト、ダリ、レェツ」のカタログをご紹介します。
「二重のイメージ」をテーマとしたこの展覧会には、動物や植物などのモティーフを組み合わせた肖像画で名を馳せた16世紀イタリアのアルチンボルトや、シュールな作風で知られるダリの、いわゆる「不可思議な絵」だけでなく、15世紀のフランドルの画家メムリンクやドイツ・ルネサンスの巨匠デューラーの水彩画、さらには目の錯覚を用いたユニークな絵画や彫刻で活躍する現代アーティストのマルクス・レェツまで、多岐にわたる作品250点が一堂に会しました。カタログでは、メムリンクの一見普通の宗教画に、あっと驚く「二重のイメージ」を見いだしたり、デューラーが美しい水彩画に込めたメッセージをひもといたりと、描かれたものの表象的なイメージと、そこに秘められた道徳的、象徴的、宗教的、政治的なメッセージが紹介されています。
表紙にダリの作品2点を互い違いに配したり、袋とじが施されていたりと、デザインも遊び心に溢れています。古今東西の画家が私たちに仕掛けた“イメージの罠”を楽しめる工夫に満ちた1冊です。