モネ(Claude Monet/1840-1926)の睡蓮の連作や、画商ポール・ギヨーム(Paul Guillaume/1891-1934)による20世紀の近代絵画のコレクションを擁することで知られるパリのオランジュリー美術館。オルセー美術館と並んで印象派の殿堂として名高いこの美術館で、2017年の4月5日から東京の石橋財団ブリヂストン美術館の名品を集めた企画展が開催中です(2017年8月21日まで)。印象派作品をハイライトに、日本の近代洋画、20世紀のモダンアート、そして抽象絵画まで、石橋財団コレクションの核を成す選りすぐりの名品76点がパリで一堂に会しています。
日仏交流160周年を翌年に控えた2017年、パリのオランジュリー美術館で現在行われているのが、「ブリヂストン美術館の名品−石橋財団コレクション展」です。モネの睡蓮の作品を用いた展覧会ポスターは、日本の日の丸を彷彿とさせるデザイン。「東京・パリ」と大々的に銘打たれ、本展が日仏両国間の橋渡しの存在であることを堂々と伝えています。
日本屈指のクオリティを誇る石橋財団のコレクションは、ブリヂストンの創業者である石橋正二郎(Shojiro Ishibashi/1889-1976)による個人蒐集に端を発します。コレクションの出発点となったのは、青木繁(Shigeru Aoki/1882-1911)を代表とした日本人洋画家の作品でし
た。石橋正二郎はその後日本の洋画家たちが手本にしていた西洋絵画にも関心を持ち、1940年代より印象派をはじめとした作品を精力的に蒐集し、コレクションの充実を図りました。そして戦後間もない1952年、コレクションの一般公開のために東京・京橋の本社ビル内にブリヂストン美術館を開館させたのでした。石橋正二郎の亡き後、次世代に受け継がれたコレクションは、戦後の抽象絵画などの新しいジャンルにも広がりを見せ、現在は約2,600点を数えています。
現在東京のブリヂストン美術館は、新美術館建設のため長期休館中です。2019年秋に予定されている美術館の再開館を待つかたわら、石橋財団のもっとも代表的なコレクションが日本国外で一堂に会する本展が実現しました。
展示は日本の近代洋画にはじまり、モネ、セザンヌ(Paul Cézanne/1839-1906)、ルノワール(Pierre-Auguste Renoir/1841-1919)、カイユボット(Gustave Caillebotte/1848-1894)などの印象派作品、またピカソ(Pablo Picasso/1881-1973)、マティス(Henri Matisse/1869-1954)のモダンアートに、ポロック(Jackson Pollock/1912-1956)や白髪 一雄(Kazuo Shiraga/1924-2008)の戦後の抽象絵画と、19世紀から20世紀の美術界のムーブメントを一望できる贅沢な内容です。さらに作品が蒐集された背景にも光を当て、石橋正二郎から3代に渡る実業家一族の芸術への造詣と情熱を紹介しています。
本展と併せて鑑賞したいのが、オランジュリー美術館常設展のポール・ギヨームのコレクションです。ルノワール、セザンヌ、ピカソ、マティスと、石橋財団コレクションと共通のアーティストが多く名前を連ねているのに気づかされるでしょう。本展で展示されているモディリアーニ(Amedeo Modigliani/1884-1920)の作品に関しては、奇しくもかつてポール・ギヨームの所有であったことがわかっており、今回パリで出会った両コレクションの不思議なゆかりを感じさせてくれます。
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Update : 2017.6.1 文・写真 : 増田葉子(Yoko Masuda)
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